『大学法人の経営における5フォースモデルとは』
① 5フォースモデルとは
外部環境分析(自分以外の「相手」の分析)における5つの競争要因
1.既存業者間の敵対関係
2.新規参入企業の脅威
3.代替品の脅威
4.売り手の交渉力
5.買い手の交渉力
② 既存業者間の敵対関係とは
すでに教育業界に参入している大学法人を指します。
以下のような状態は、競争が激化する要因となります。
a.同業者が多い(現在大学法人の数はすでに飽和状態ですよね)
b.同程度の規模の会社がひしめいている(これも同程度の規模の母数は多いですよね)
c.市場規模の成長速度が遅い(少子化も原因して成長どころか停滞していますよね)
d.固定コストが高い(校舎・施設など固定資産のコストが高いですよね)
e.製品を差別化するポイントが少ない(教育サービスの差別化の困難性を示していますよね)
f.生産能力を小刻みに増やせない(大学における生産能力とは「教員によるサービスの提供」でしょうか)
g.業界から撤退しにくい(簡単に閉校にできないですよね)
つまり、大学法人を取り巻く外部環境は、競争が激化する要因が揃っている状態です。
まずは、この前提で大学法人の経営をとらえてみてはいかがでしょうか。
③ 新規参入企業の脅威
教育業界の参入障壁(外部の企業が教育業界に進出しやすいかどうか)はかなり高く、外部企業が教育業界に参入しにくい状況となっています。その点では、新規参入企業の脅威は低いと言って良いでしょう。
④ 代替品の脅威
これは、保有することによって従来の製品が不必要になる製品です。
大学における教育サービスの提供にとってかわる代替品としては、脅威となるほどの代替品はなかなか出てこないでしょう。
大学の卒業資格や各種資格の取得、大学生活における経験などは、すぐに代替品があらわれるものではないと思います。
つまり、大学法人が提供するサービス自体がすぐに代替品に取って代わられる状態ではないと思います。
⑤ 売り手の交渉力
大学法人が教育サービスという無形財の提供を生業としていることから、売り手(供給業者)とは教育サービスを提供するために必要なモノ・ヒト・情報などの供給業者でしょうか。
モノならば、学校へ備品を卸している業者がそうですし、施設維持のためのモノを提供している企業などもそうです。
ヒトならば、教育サービスの提供に欠かせない教員や職員を供給してくれる企業です。教員や職員の採用に関わる企業が供給業者となるでしょう。
情報ならば、各種情報を提供してくれる企業です。
一般的に、供給される商品(サービス)が差別化されているものであれば、その供給業者がもつ交渉力は高くなります。
この点については、大学法人に対する売り手の交渉力は少し高いのではないでしょうか。
⑥ 買い手の交渉力
大学法人における買い手とは、教育サービスを受ける代わりに授業料等を支払ってくれる学生たちでしょう。
少子化のなかで買い手となる学生の数は減少し、かわってサービスを提供する大学法人は過剰状態にあるので、現在は買い手の交渉力は高いと言えるでしょう。
⑦ 5フォースにおける分析結果
つまり、5つの競争要因をまとめると、
「既存業者間の敵対関係」はかなり競争が激化する要因となっている
「新規参入企業の脅威」と「代替品の脅威」はそれほど大きくはない
「売り手の交渉力」と「買い手の交渉力」は少し高めである
となります。
このことから、大学法人が安定した経営を行うためには、
「既存業者間の敵対関係」との競争に打ち勝つ要因を見つけること
「売り手の交渉力」と「買い手の交渉力」の交渉力を下げるように努力すること
の2点が重要だと考えます。
以上が5フォースモデルをもとにした大学法人の経営に関わる外部環境分析となります。
次回は「競争回避の原則」についてお話します。
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