【SS】夜光おみくじ

大晦日の夜。
都心から離れた人気のない高台のベンチで、一組のカップルが空を見上げていた。
駐車場に止めてある車のラジオから流行の歌が流れている。
雲一つない夜空には、星が瞬いていた。

「僕たちの運命を大晦日の夜空で占おう。」
「夜光おみくじね。」
「年が替わるまでに星が一つ流れたら、来年はいいことがある。」
「二つ流れたら?」
「一緒に住もうか。」
「三つ流れたら?」
「結婚しよう。」
「じゃあ、六つ流れたら?」
「四と五は飛ばすの?そんなに流れたら何か悪いことが起こるかも。」

二人が見上げる夜空に、二つの星が左から右へ横切った。
「一緒に住もうか。」
「ちょっと待って。まだ星が流れるかも。」
今度は右から左へ四つの星が横切った。

視界の右側が明るくなった。
初日の出には早すぎる時刻だった。

ラジオから緊急の音声が流れている。
「隣国から二発のミサイルが発射されました。こちらも報復として四発のミサイルを…」

除夜の鐘は、年末ではなく終末を告げていた。

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