Accent and Idea

毎週ショートショートに参加し始めたら、思いの他はまってしまいました。 毎週楽しくショートショート書いています。 小説にも挑戦してみたい今日この頃。

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マガジン

  • 勉強をする意味と理由

    勉強をする意味と理由について、小話形式で語ります。

  • お父さんといっしょ

    息子との対話や遊び

  • 雑感

    日々の雑感をまとめます。

最近の記事

【ss】バンドを組む残像

「博士、今日のお題は難しそうですよ。我々には残像が残るほど早く動くこともできませんし、弾ける楽器もありません」 「大丈夫じゃ。これは量子力学的な現象にすぎん。君、不確実性定理を理解しているかな」 「ええ、位置と運動量の両方を決められないと言うアレですね」 「粒子であり、波であると言うことじゃ」 「はぁ、そうですね」 三十代の男はやや苛立っている様子だ。 「それで、それがどう関係するんですか」 「原子に対して電子が入り込める軌道が限られていてな」 「ああ、あの原子の周りに電

    • 【SS】残り物には懺悔がある

      今日はクリスマス会だ。 パーティー料理も楽しみだけど、一番の楽しみはプレゼント交換会だ。 意中の委員長のプレゼントをゲットしたい。 クリスマス会は順調に進んだ。 そして最後のメインイベント、プレゼント交換が始まった。 ひとりひとりプレゼントを台の上に置いていく。 そして委員の人が位置を入れ替える。 最後に、順番にくじを引いて、出た数字のプレゼントをもらうのだ。 「ちょっと君、こっち手伝って」 委員長に呼ばれて僕は列に並び損ねた。 しかも、大した用ではなかった。 列の最

      • 【ss】ときめきビザ

        中年になると圧倒的に不足する成分がある。 ときめきだ。 少年・青年の時代に追い求めた夢のいくつかは実現し、残りのいくつかは叶わないことが確定する。 残りの人生が、消化試合だと感じ始めるのがおそらく中年なのだろう。 さて、私は中年だ。 ときめき不足とは、私自身が感じていたことなのだ。 そんなある日、不思議な世界への入国許可証の存在に気づいた。 そして、学校や職場で培った能力が一切通用しないその世界に魅了されていった。 入国できるのは日曜日に限られる。 だから日曜日になる

        • 【ss】モンブラン失言

          「わたくし、モンブランが大好きですの」 「それは奇遇ですね。私もなんですよ」 お見合いの後の最初のデートはホテルのラウンジだった。 少しばかり背伸びをしているわけだが相手はお嬢さんだ。 失礼のないようにしたい。 「なんと言っても最高峰でしょう?」 「そうですね。私は最高のモンブランを知っています。今度一緒に行きませんか」 「山のモンブランではないでしょうね。わたくし登山はちょっと苦手ですのよ」 「いえ、違いますよ。山ではありません」 「わたくしも、モンブランの最高の店を知っ

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        • 勉強をする意味と理由
          11本
        • お父さんといっしょ
          14本
        • 雑感
          22本

        記事

          【ss】誘惑銀杏

          人間の営みから体に悪いものが全て禁止された世界。 創造性が発揮できないと人々は苦しんでいた。 旧世紀の技術革命でで綺麗な文章は機械が書いてくれる。 人に求められたのは狂気と理不尽と酩酊だった。 某大学の研究者A氏も非常に苦労していた。 研究者とは、コーヒーを入力して論文を吐き出す生き物なのだが、コーヒーが入手できなくなったのだ。 過度なカフェインが寝不足を招くと禁止されたためである。 A氏はタンポポコーヒーを自作するなど試してみたがどうもうまくいかない。 あの頭痛と吐き気

          【ss】誘惑銀杏

          【ss】一夏の人間離れ

          僕はいわゆる甘えん坊だった。 高校生になっても未だに親離れもできていない。 朝も一人で起きられないしご飯の支度もできない。 そんな僕を心配して、夏休みに両親は僕を無人島へ連れて行った。 親離れどころか一夏の人間離れである。 最初はとても大変だった。 自覚はあったのだが、僕には生存するための能力が著しく欠けていた。 人間の文化の中でいかに守られていたのを痛感する。 しかし、無人島の生活にも徐々に慣れていった。 視力も聴力も改善し、身体も相当強くなった。 並の高校生には負ける気

          【ss】一夏の人間離れ

          【SS】黒幕甲子園

          「社長、社長の母校出場してないんですか?残念だなぁ」 「予選最終戦で優勝間違いなしの候補に負けてな」 「社長、いいんですか、負けっぱなしで」 「手は打ってある」 その後、社長の母校を下した優勝候補のチームがあっけなく負けた。 そして、優勝候補を下したチームにスキャンダルが発覚した。 お金で勝利を買ったというのだ。 青春を踏みにじる行為に世間からの非難が集中した。 そして、特例として社長の母校が繰り上がりで出場することになった。 「社長、もしかしてあの事件の黒幕はあなたです

          【SS】黒幕甲子園

          【SS】鋭利なチクワ

          ネリー王国は『トウフの角』という鈍器を持つダーイズ帝国の侵略を受けた。 抵抗は無駄だった。 帝国騎士長トーニューは非常に強かった。 そして今、敵の精鋭が王国の玉座に迫る。 「父上、逃げてください」 「ワシも戦う」 「仕方ない。本気を出します」 帝国の精鋭が王子に襲い掛かった。 王子は、棒の先に鋭利なチクワを付けた槍で応戦し、瞬く間にトウフの角を破壊していった。 武器を失った敵兵は、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。 ついにトーニューとの一騎打ちが始まった。 振り下

          【SS】鋭利なチクワ

          【ss】非情怪談

          超芸術トマソン。 それは美しく保存された無用の長物のうち不動産のものをいう。 この廃病院の非常階段もそうだ。 肝試しは夏の風物詩だ。 「やめようよ」 「びびってんじゃねぇ」 二人の青年が廃病院に入っていく。 行く先は屋上の非常階段。 三階より下が取り壊されていて非常階段として用をなしていない。 二人は非常階段を降りていく。 その先がないことは事前の知識として知っている。 しかし、実際に来てみると階段の続きが見える。 「今度は君がビビる番だよ。僕は君にいびり殺されたク

          【ss】非情怪談

          【見たことがないスポーツ:幸福レース】

          世界で最も参加者の多いスポーツ、それは蓄財レースだ。 資本主義に則り、皆、様々なものを犠牲にして蓄財レースに励んでいる。 しかし、このレースは酷く不平等であることが知られている。 生まれた場所や親の財産によって結果が大きく変わる。 一人のお金持ちの陰に百人の貧乏人が泣くこのシステムは数百年と人間達を支配してきた。 このような悪しき蓄財レースに反発する形で提案されたのが幸福レースだ。 これまで資本主義の犠牲になってきた一人一人の幸福感を大事にする考え方で、参加者は生涯を

          【見たことがないスポーツ:幸福レース】

          【ss】リベンジトリートメント

          僕の父は毛深かった。 男性ホルモンが強いのだろう。 そうすると必然的に僕も毛深くなる。 僕はすね毛に悩んでいた。 そしてついに除毛剤を買った。 早速風呂場で除毛していると父に馬鹿にされた。 男が容姿を気にしすぎた。 すね毛なんか気にするなと。 僕は憤りを感じた。 一体誰の遺伝のせいで悩んでいるのかと。 学校ですね毛をからかわれているのに。 僕の父は頭を除いて毛深かった。 男性ホルモンが強いのだろう。 後退しつつある髪の毛を気にして毎日育毛剤を使っている。 これから何

          【ss】リベンジトリートメント

          【ss】海のピ

          日本はユーラシア大陸の東端に位置し、周囲を海に囲まれているため、地政学上シーパワーに強い国である。 つまり、海運において大きなアドバンテージがあるのだ。空路の方が早いという意見が聞こえてきそうだが、運べる物量が違う。 その一方で、日本は中国、ロシアが太平洋にアクセスするのを邪魔する位置にあり、あからさまに表現したならば反感を招きかねない。 そんな日本の強みを活かす機運を高めるために打ち出されたキャッチコピーが「海のピ」である。 海の日の「日」をカタカナにして親しみやす

          【ss】海のピ

          【SS】彦星誘拐・織姫妖怪

          織姫は魔女の毒針に触れて永遠の眠りにつく。 月日が経ち、彦星宛てに「洞窟の奥で待つ」と織姫から手紙が届く。 彦星は洞窟に着くいたところで後ろから鈍器で殴られ気を失う。 誘拐されて監禁された彦星は暗闇の中で織姫の声をきく。 「洞窟を出るまで決して振り返らないでください。」 誘惑に勝てずに織姫の声の方へ振り返った彦星が見たのは、織姫妖怪。 織姫は怒り狂い彦星を追い立てる。 逃げ切った彦星が川で身を清めるとアマテラス、ツキヨミ、スサノオが生まれ、織姫の父である天帝と戦う。

          【SS】彦星誘拐・織姫妖怪

          【SS】一方通行風呂

          生活安全課の宮沢警部は頭を抱えていた。 行方不明の届け出がうなぎ上りなのだ。 最近できた『スパ・マウンテンキャット』が怪しい。 潜入捜査を命じた高田巡査も行方不明になった。 そして『私は大丈夫です。探さないでください』という手紙が届いた。 終わらない仕事、部下を行方不明にした後悔、上司への説明。 宮沢は追い詰められていた。 いっそ猫になってしまいたい。 宮沢は自ら潜入を試みた。 名前から考えると山猫軒のもじりだ。 化け猫が経営しているのかもしれない。 ここは一方通行風呂

          【SS】一方通行風呂

          【ss】天ぷら不眠

          不眠は国家的な課題である。 2030年厚労省の白書に不眠の文字が並んだ。 今度のビッグウェーブは不眠か。 大学病院の新人医師はポツリと独り言を言った。 「あの、最近よく眠れなくて」 「どれくらい眠れないんですか?」 「いつもより一時間くらい短いです」 「わかりました。薬出しときます」 患者の症状を書いたカルテにはこう記載した。 「深夜まで眠れない」 新人医師のカルテを見た医長はカルテを見て改ざんした。 「朝まで眠れない」 そして、院長も改ざんした。 「全く眠れない」

          【ss】天ぷら不眠

          【SS】隔週警察

          人が思考をAIに渡してから10年。 財政が崩壊したこの国は、小さな政府への転換を迫られた。 無造作に増えた官庁は解体され、最低限の機能のみが残された。 その一つが警察だ。 残された警察においても、徹底的なコストカットが求められた。 証拠に基づく政策立案が声高に叫ばれ、警察機構を担う複数の警察会社がテストを経て入札を行うのだ。 今週はA社、そして来週はB社といった具合だ。 A社とB社の成績は、常にA/Bテストされ、成績の悪かった会社は応札できない。 その結果、A社が警察

          【SS】隔週警察