【ショートショート】壁に少々らっきょう

 カレー喫茶キツツキは、内装が独特だった。壁も柱もキツツキがあけたであろうで穴だらけだった。

 千円のカレーを注文。備え付けのらっきょうを皿に乗せ、ふと視線を上げると、壁に少々らっきょうが詰まっている。らっきょうが、どんぐりキツツキのあけた穴にぴったりフィットしていた。

 らっきょうを穴に詰めたい衝動に駆られたが間一髪のところで思いとどまった。しかし、この衝撃的な光景をSNSに上げないなんてことはできなかった。

 その後、キツツキは見間違えるほど繁盛した。バズったのである。久々に入店すると、備え付けのらっきょうは撤去され、壁中にはらっきょうが詰まっていた。

 投稿を詫びたが、店主は嬉しそうだった。

 「いったい誰が最初のらっきょうを埋めたんだろう。」

 独り言が声に出た。すると店主がニンマリと自分を指差していた。

 新しいメニューに目をやると、
 カレーらっきょう添え千二百円。
 うまく乗せられたのは、私だったのかもしれない。

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