【ショートショート】枢軸マーガリン

 一番隊が砦に突入して30分は経過していた。二番隊隊長は砦に到着するとすぐに突入の指示を出した。

「しかし最後の無線、枢軸マーガリンとはなんだ?聞き違いか?通信途絶は砦の奥まで電波が届かないことで説明がつくが…。」

 二番隊が砦の中へ入ると、外れて倒れた扉の奥に、倒れている一番隊の姿があった。不思議なことに全員が防寒着を脱ぎ、隊長は扉の縁に手をかけていた。

「二番隊、用心して進むぞ。」

 二番隊は次の部屋へ歩を進めた。入り口の扉の下に、ボタン付きの装置が固定されていたが、そんなものを押すほど彼らは迂闊ではない。

 全員が部屋に入ると、扉が自動で締まり、温風が噴出した。二番隊はやむなく防寒着を脱ぎ捨てた。

 しばらくすると、入り口の扉がボタンの上に落下した。装置が作動し、扉の奥からガスが噴き出す。

 隊長は薄れゆく意識の中で扉の縁を触ると、乳白色のヌルっとした油が手に着いた。隊長は無線機をプレスし叫んだ。

「枢軸マーガリン。」


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Accent and Idea
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