【ss】一夏の人間離れ
僕はいわゆる甘えん坊だった。
高校生になっても未だに親離れもできていない。
朝も一人で起きられないしご飯の支度もできない。
そんな僕を心配して、夏休みに両親は僕を無人島へ連れて行った。
親離れどころか一夏の人間離れである。
最初はとても大変だった。
自覚はあったのだが、僕には生存するための能力が著しく欠けていた。
人間の文化の中でいかに守られていたのを痛感する。
しかし、無人島の生活にも徐々に慣れていった。
視力も聴力も改善し、身体も相当強くなった。
並の高校生には負ける気がしない。
この一夏で僕の生存に係る能力は人間離れした。
一夏の人間離れである。
と言いたいところだったが実際は違う。
無人島生活を始めて間もなくして僕は気を失った。
あっという間に体調を崩して瀕死の重症。
救急隊に運ばれて、病院のベットの上で生死の境を彷徨った。
僕の魂は僕の体を離れて、夏休みの終わりにやっと自分の体に戻ったのだ。
これぞ僕にとっての一夏の人間離れであった。
いいなと思ったら応援しよう!
お読み頂いありがとうございます。記事が役に立てばうれしいです。このエリアまで読んで頂いた方が、これまでもこれからも幸せでありますように。