【SS】アメリカ製保健室

海外進出を目指すA社は、公用語をはじめ、あらゆるものを”アメリカナイズ”した。
保健室もその一つである。

アメリカ製のベッド、アメリカ製の医療機器、そして保健師はグラマラスな金髪のアメリカ人だった。

ある日、お腹を壊した社員が保健室に行くと、入室を断られた。
アメリカ人ではなかったためだ。

別の日、アメリカ人社員が風邪をひいて保健室に行った。
保健師は、簡単な検査をすると、その社員を追い出した。
ウイルスがアメリカ製ではなかったためだ。

”アメリカナイズ”されたA社の業績はみるみるうちに悪化した。
最後には、アメリカの企業に買収され、その所有者までアメリカナイズされてしまった。

A社を買収したアメリカ人の社長は、A社を視察した。
社長は、A社のおかしなルールを一つ一つ指摘して直させた。
保健室もその一つである。

新しい保健師は、日本人だった。
社員は、誰でもこの保健室を利用できるようになった。

社長は言った。
「アメリカは人種のるつぼだ。」

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