【SS】ごはん杖

戦場のど真ん中。原っぱの向こうから、槍を持った足軽がじりじりと迫る。

俺は、仲間と一直線に並び槍を構えた。すると、杖をついた老人が戦列から離れ、ヨタヨタと敵陣に向かっていくではないか。

老人は、あっという間に敵に取り囲まれ見えなくなった。おそらく生きてはいないだろう。それから何刻この戦場にいたのかはわからない。双方、相当な被害が出たことは確かなようだ。

おそらく明日勝敗が決まる。残り少ない干し飯と芋がら縄と一緒に煮て食べる。仲間の中には飯がない者もいた。はたして我が軍はまともに戦えるのだろうか。

例の老人が現れた。いったいあの戦場でどうやって生き延びたのか。

「飯がない者集まれ。」

老人とは思えない力強い声に皆が老人に注目した。老人が杖に巻かれた布を外すとそこには杖の形に固められた餅があった。仕込み杖ならぬごはん杖である。いつの間にか老人の背筋が伸びている。

「明日が決戦だ。もはや老人に扮する杖はいらぬ。」

忍者だったのか。

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