【SS】助手席の異世界転生

学生から密告があった。
土曜の深夜、研究室に残った助手が、叫びながら棒状の物を振り回しているらしい。

研究室ではVRを扱っている。
棒状のセンサーを振り回すことは珍しくないし、土曜の深夜まで研究に打ち込むのは何も悪くない。
だが、密告があった以上、確認せざるを得ない。

いつもなら土曜は午後7時に帰宅するところ、帰ったふりをして教授室に隠れて時間が過ぎるのを待った。
そして午後10時を過ぎた頃、助手の部屋から声が聞こえてきた。

研究室のパソコンは、不正利用の防止を目的として監視ソフトウェアが導入されている。私は、静かに自分の端末を立ち上げ、助手席にあるパソコンの監視を始めた。

助手が作っているのは、異世界転生もののアプリらしかった。
さすが我が研究室の助手なだけあって素晴らしい作りだった。

助手が叫び声をあげるタイミングで、画面上の魔物が派手に倒れた。
その魔物の名前は、「教授」であった。

私は、この助手を異世界転生させることにした。

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Accent and Idea
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