【ショートショート】秋の空時計
肝いりプロジェクトの打合せに、昼間めずらしく外に出た。
空を見上げると、大きな時計が上空かなたに浮かんでいて、空気が澄んでいるせいか、秒針まではっきり見える。
まさか秋の空に時計が浮いているなんて。でもこれはきっと幻覚に違いない。プロジェクトに熱中して徹夜したせいだ。そう考えてやり過ごすことにした。
打合せの会場に着く頃には、上空の時計は高度を落としていた。よく見るとタイマーがセットしてあるようだった。いったい何が起こるのか。
打合せの最中、窓の外からけたたましいアラームが聞こえた。どうやら時計のタイマーが起動したらしい。打合せの相手方も窓に駆け寄り、時計を指さしていた。時計は幻覚ではなかったのか。
打合せはうまくいった。しかし、手ごたえがなく、期待していた高揚感が全くなかった。プロジェクトに飽きてしまったのか。
帰り道ではやたらと男女の別れ話に遭遇した。
さて、私も気が変わってしまったようだ。ここらでペンを置くとしよう。
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