【SS】レトルト三角関係

同窓会に参加するため、40年ぶりに帰国した。
俺は、高校卒業と同時に海外移住していた。

卒業式の日、A子とB美の二人から告白された。
二人は親友同士、そして告白も同時だった。

俺は答えを保留した。
A子は地元に残り、B美は県外の大学に進学すると言っていた。
二人には、どちらにも連絡しない約束をした。
三人の関係は加熱殺菌されてレトルトパウチに封入されたのだった。

同窓会では大いに盛り上がった。
A子とB美に挟まれて、レトルトパウチに詰め込んだ甘酸っぱい青春が湯煎されていく思いだった。

「いっそのこと三人で結婚しましょ」
「待たせた責任を取ってもらわないと」

俺は、海外に妻も子もいる身だ。

「まさか、海外に逃げないでしょうね」
「もしそうなら…」

二人の鋭い視線がナイフみたいに突き刺さる。
俺は思わずおしぼりで禿げ上がった頭を拭いた。

レトルトの賞味期限はせいぜい2~3年。
40年は長すぎた。
硫黄の匂いに包まれた苦い時間を過ごすことになりそうだ。




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