『わたしの見ている世界が全て』ほぼ弛緩しない82分。弛緩した瞬間訪れるゆるい幸せ、またはその予感
私とそれぞれ異なる人間の四兄弟だが、こんなにも自分の写し鏡になるのか、と正直戸惑いながら観ていた。少しずつ自分の立場や性格、歴史と近い点があって、正直観ていて苦しいときもあった。だが、この映画は安息を用意しない。弛緩しない時間がずっと続く。そこにゆらりと訪れる小さな幸せに笑い声が出る。ただ本当にそれが幸せだったのだろうか?でも、それを幸せと呼んで、私は人生を生きている。
宇野維正さんが絶賛していたため、本作を観たため、彼には感謝したい。ただそんな事実を忘れてしまうほど自分の映画だった。森田想の怪演含め、役者たち一人一人が素晴らしかった。左近圭太郎の長編2作目にして、屹立した傑作。蝉の鳴き声がうるさいベッドルームでテレビに張り付いて観ていた。