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『TAR/ター』完璧に構築された映画。そして、権力というものは崩れ去るということ。

 構成が衝撃的な上に、完璧に構築されており、緊張感が張りつめたように続く映画。その緊張感をより際立たせる、ケイト・ブランシェットのカリスマティックな凄みある演技。ヒドゥル・グドナドッティルの静謐と激情を自在に操る音楽、その環境音を含めた音響が本当に見事だ。
 物語としては、権力のトップにいる者がキャンセルされて、崩れていくさまを描いている。キャンセル・カルチャーが蹂躙するこの時代に観るべき映画。   
 キャンセルされてから、ターの現実と夢の境界が分からなくなっていく。人間の心理の深層を描くとホラーになる。
 ただ地位を失っても、彼女に残ったものが、一欠片の希望になっていて、そこまで含めて完璧な映画だった。
 トッド・フィールドの監督作品を初めて観たが、このレベルの映画を16年ぶりに公開するのだから、次作はどうなるのだろう。人生は長い。まだ先に山はいくつもあるんだろう。始めようか。

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