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『陪審員2番』償わぬ罪は大きくなり、やがて罪人を呑み込まん

 双子の出産予定日に、流産のショックで、土砂降りの雨の中、『何か』を轢いてしまう。その後、妻はまた身籠るも、陪審員を担当することになった殺人事件と自分が関係していることが分かる。
 罪は気づいた瞬間に告白しないと、言い出しにくくなる。それを終身刑の罪まで大きくした本作。展開の面白さと反比例するモチーフの重苦しさ、それをテンポよく映像化するイーストウッドの手腕と胆力。
 有罪となっても、無罪となっても、すっきりしないこの映画。ラスト15分の強烈さは必要で、イーストウッドは自分の色より、本を大切に作品化しているようだった。

妻の出産を控えた夫の異変
しっかりと前を見れない
あんな近くにいた妻に言えないほどの真実
あなただから安心できたのに
世の中は平等、ではない
二度と飲まないと誓っていた
正義や真実より愛を選んだら

 サウンドトラックを聴きながら、これを書いているが、正直辛い。そういう、食らってしまう映画だろう。94歳のイーストウッドが、これだけ心に釘を打ち込む作品を作っているのが本当に凄い。これを観たから頑張れるというような作品ではない。観る前と観た後では見える世界が違う。

僕はここにいない
これは現実じゃない 

radioheadより

 そう、私にとって『キッドA』で体験した体験に近い。芸術とは恐ろしい。ニコラス・ホルトの当惑の表情が脳内に今もぴたりと残っている。


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