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U2『Pop』絶大なるポテンシャルを持った難作。野心作にして、失敗作。

 最大寒波襲来前の穏やかな昼下がりのランニング。私はこのアルバムと向き合いたかった。そして、このアルバムのことを書きたかった。完成前にポップ・マート・ツアーのスケジュールが決まっており、完成する前のリリースとなり、彼らの輝かしい90年代の最後の作品は失敗作との評価だった。

①Discotheque
 エッジのギターのあり得ないほどのエフェクトはこのアルバムを象徴している。後のライブ・バージョンやNew Mixの方がクリアでエッジがあるが、このバージョンは時代を寝盗っている。
②Do You Feel Loved
  このアルバムの中では、完成度が高い。アダムのセクシーなベースラインが牽引している。‘愛されてるって感じてるか?'という歌詞がこのアルバムらしい。
③Mofo
  混沌としたサウンドで、何をしたいかはっきりと分からない。だが、この曲はポノが亡くした母への歌であり、後のライブ・バージョンはU2の曲の中でもベストである。もう少しアレンジが洗練された音を、このバージョンで見たかった。
④If God Will Send His Angels
 ボノがSFゴスペルと呼んだ、この未来的で伝統的なバラードはとても美しい。このレコーディングに立ち寄ったという、ネリー・フーパーはこの曲に関与したのでは?悪いところが見当たらず、ロマンチックで、このアルバムで彼らがしたかったことが、成就している。
⑤Staring At The Sun
   混雑した音世界だが、後のアコースティックライブバージョンや、簡潔なnew mixより、私はこのバージョンの混沌が好きだ。この曲のテーマとも合っていると思う。
⑥Last Night On Earth
   シンセサイザーとエッジのギターから走り出すロック・ソング。散文的な詩が好きだ。
⑦Gone
  ゆったりとしたブレイク・ビーツのようなラリーのドラムが素晴らしい。今作以後の彼のプレイの雛形になっている。曲自体も、このアルバムで彼らが打ち出した方向性に見合っている。
⑧Miami
  変な曲である。何度も何度も聴いているが、いまだに聴き方が分からない。ボノの詩作は好調で、どんなテーマも彼はものにできた。
⑨The Playboy Mansion
  愛おしい曲である。‘マイケル・ジャクソンが歴史なら、僕はどうすればいいだろう?'と挑発的な一面もある。「それじゃ悲しむ時間、恥じる時間などあるだろうか?」という歌詞が大好きだ。この曲は彼らはもっとプッシュしてよかったのでは?
⑩If You Wear That Velvet Dress
  危険な雰囲気のポノのボーカルが素晴らしい。とてもミステリアスで、静かだが、美しく強い曲だ。
down↓Please
後のシングルパージョンやライブバージョンの偉大さに比べれば、中途半端な出来である。この曲は反戦歌の名曲であり、’愛は大きい。それは僕たちより大きい。でも、愛は君が考えているようなもんじゃないんだ。'など、素晴らしい歌詞の宝庫であり、このアルバムの詩作を象徴している。
down↓Wake Up Dead Man
風変わりな暗い曲。この曲で終わることで、このアルバムを更に陰鬱なものにしているが、それも悪くない。

 最高のバージョンでリリースしていたら、U2の最高傑作の一つになっていたのは、間違いないだろう。私ほど、このアルバムを好きな人は存在するのか?と言いつつも批判したくなる、僕にとって唯一無二の作品である。

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