肝臓病があるために、 心臓あるいは肺自体に病気がないにも かかわらず、血液中の酸素が足りなく なってしまう病気です。
自分のために肝肺症候群をまとめておく
総論
肝肺症候群は, 門脈圧亢進症のある患者において,肺微小血管が拡張することにより生じる低酸素血症である;呼吸困難および低酸素血症は立位で悪化する。
肝肺症候群は, 慢性肝疾患の患者において,典型的には門脈圧亢進症を合併している場合,肺内微小動静脈の拡張により引き起こされる。その機序は不明であるが,肝臓における血管拡張物質の産生増加またはクリアランスの低下によると考えられている。血管拡張が起こると血流量が換気量を上回り低酸素血症に至るが,これは特に全身の血管拡張により心拍出量が増加していることによる。
肝肺症候群には,肝肺症候群を合併していない進行した肝疾患患者の対照と比較すると,BMP9(bone morphogenetic protein 9)およびBMP10の低値との関連が認められる。さらに,BMP9の低値には肝肺症候群の重症化との関連も認められた(1)。
肝肺症候群は,しばしば病変が肺底部により多く生じることから,座位で増強する呼吸困難(platypnea)と座位で増強する低酸素血症(orthodeoxia)を引き起こす可能性があり,どちらも臥位により軽減する。また多くの患者に, くも状血管腫などの慢性肝疾患の特徴的な所見がみられる。約20%の患者は肺症状のみを呈する。
総論の参考文献
1.Rochon ER, Krowka MJ, Bartolome S, et al: BMP 9/10 in pulmonary vascular complications of liver disease.Am J Respir Crit Care Med 201 (11):1575–1578, 2020.doi: 10.1164/rccm.201912-2514LE
診断方法
パルスオキシメトリー
コントラスト心エコー検査およびときに他の画像検査
肝疾患を有する患者が呼吸困難(特に座位で増強する呼吸困難)を訴える場合は,肝肺症候群を疑うべきである。そのような症状を呈する患者では,パルスオキシメトリーを行うべきである。症状が重度(例,安静時呼吸困難)であれば,室内気吸入下および100%酸素投与下で動脈血ガスの測定を行い,シャント率を判定すべきである。
気をつけるべきこと
門脈圧亢進症の患者で,臥位により軽減する呼吸困難があれば,肝肺症候群を考慮する。
診断に有用な検査は コントラスト心エコー検査である。撹拌した生理食塩水の微小気泡を静注すると,通常は肺毛細血管で捕えられるが,本症では急速に(すなわち,7心拍動以内に)肺を通過して左房に現れる。同様に,テクネチウム99m標識アルブミンを静注した場合,肺を通過し,腎臓および脳に現れる。 肺血管造影では,細かい,または斑点状の血管構造がびまん性にみられる場合がある。血管造影は,血栓塞栓症が疑われない限り,一般的には必要ではない。
治療法
酸素投与
主な治療は,症状に対する酸素投与である。血管拡張を抑制するためのソマトスタチンなどの他の治療法は,一部の患者にのみ中等度の効果がある。病変の多さとサイズを考えると,コイル塞栓術は実質的に不可能である。一酸化窒素合成阻害薬の吸入は将来の治療法の選択肢となりうる。肝肺症候群は, 肝移植後または肝臓の基礎疾患が軽快すれば,改善する可能性がある。無治療の場合,予後は不良である(生存期間は2年未満)。
まとめ
肝肺症候群の患者には慢性肝疾患の所見がみられる傾向にあり,また座位で増強する呼吸困難を認めることがある。
本疾患が疑われる場合,パルスオキシメトリーを行い,動脈血ガス測定と画像検査(例,コントラスト心エコー検査)を考慮する。
治療は酸素投与による。