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本屋バイト終

4月から企業勤めになるので、今日2年働いた本屋を卒業した。
本好きの一念で働き始めたバイトだったので、
給料が低かろうが仕事がきつかろうが楽しいバイトだった。
特に私は文学部で漫画やアニメが大好きで、映画を観まくっていてライブに行きまくっているという放蕩クソ貧乏大学院生だったので、商品管理の仕事を一任していただいていた。
大学の方でも私が本屋で働いていると知った教授が色々と授業をしてくれたり、院生の立場をフル活用して、『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修中川裕先生とコラボして本屋を盛り上げたりもした。
ずっと本屋でバイトしていたかったが、将来的に家族が欲しい私はサラリーマンになることを優先したし、本を楽しむためには人々の生活や命が守られていることが大前提であるとも思っている。それは私が東日本大震災を経験しているからでもあるが、本や漫画、映画を楽しむ人々の生活を守るために私は防災コンサルタントという仕事を選んだのだ。
だから、本への情熱や危機感は後続の商品管理に引き継いできた。
それを下記に引用するので、よろしければ読んでいただきたい。

出版業界の最大の特徴として必ず挙げられるのは、
・再販制度
・委託販売制度
の二つです。
簡単に説明しますと、再版制度とは 「出版社が書籍の値段を決め、 小売店が定価で販売できる」というものです。 本来これは独占禁止法で禁じられているのですが、これにより小売店ごとに値段が異なることなく(つまり価格競争なしに)、 全国どこでも同じ値段で本が買えます。なぜ出版業界だけにこのような制度が許されているかというと、出版が文化や歴史を作る行為だからです。 Z世代の人々には意識しづらいことですが、 文字と本があったからこそ人類は知恵を後世に伝え、発展してきました。 また、活字になり情報が広く広まることで、文化は培われてきたのです。 本の値段が地方と都会で異なったり、 貧富の差で買えないことがあると、このような知恵や文化は一部の人々の特権になってしまいます。 それでは絶対王政の時代と変わりません。 だからこそ、 出版業界では再販制度が許されているのです。
裏を返せばこれは、出版にはそれほどの責任があるということでもあります。 しかし近年これがうまく機能しないことがあります。
それが二点目の委託販売制度に繋がります。 これは皆さんご存じの通り「一定の期間内であれば返品が可能」という制度です。 これにより書店は安心して書籍を大量に入荷し、 店舗に並べることができます。 また、 部数が少ない本であっても返品が可能という前提があるからこそ、 書店は本を入荷させることができるのです。 学術書などの売上の低い本はこのような制度の恩恵を一身に受けます。 日本では日販とトーハンが二大取次として業界を牛耳っています。 これはさかのぼれば 100年以上前からある制度であり、近年では形態が古いのではないかといわれています。
問題の一つ目としては、取次を通すことで、既刊の配送が遅れることが挙げられます。 昔とは異なり、 現代では交通網が発達し、大量の本をどこからどこでも輸送できるようになりました。 しかし旧来の委託販売制度では、出版→取次→小売店というルートを通るので、 輸送が遅れます。 これにより昨年は一部の出版社が取次を通さない出版の選択をしました。Amazon などの低コスト高パフォーマンスでできるネット書店が台頭してきた以上、この問題は今後も続きます。
もう一つは 「出版社の自転車操業」 です。 詳しくは各自調べてもらえればよいのですが、出版社は取次に新刊を卸した際に 「条件払い」 と呼ばれる支払い条件を使っています。 これは一言で言いますと、 「本が売れなくても新刊を出せばお金が入ってくる」 という仕組みです。 つまり出版社は新刊さえ出し続けていれば、とりあえず延命し続けることができるのです。 出版不況を叫ばれ、どんどん (コミックや電子以外の) 売り上げは落ちている業界です
が、新刊の出版数は増えています。 これはこの制度による弊害と言えます。
ではこれの何が問題なのかというと、前記した文化や知恵の継承という出版の責任を果たすことなく、適切なマーケティングを欠いた悪質な新刊点数が入荷することに繋がります。また、書店の方でも品物の移り変わりが早くなり、本来売れるべき本が売れない、置くべき本が置かれないという問題に繋がります。 これでは出版の果たされるべき社会的責任が果たせず、業界は更に衰退していくでしょう。
これに対して、「まあ電子書籍とかネットがあるじゃん」 という意見もあるかと思います。確かに、 本屋がなくなり、出版社が減っても、当事者以外は問題ないよう思われます。 しかし、ネットや電子書籍などのプラットフォームを管轄している会社は所詮「一企業」 であって、時代によっていつ倒産するかもわかりません。 また、個人が単体で発信する知識にどこまでの責任能力があるでしょうか。
リアルの本ならば現物が残りますが、 ネットや電子書籍は企業依存、 ブラットフォーム依存であり、 その知識は出版文化の責任能力を著しく欠いたものなのです。 世界や日本の出版業界は長い歴史があり、出版物は編集者の手によって校閲され、 出版物は公正に流布され、国が保護しています。 それが今後崩れていくかもしれない。 そしてその影響は、思ったよりも大きいかもしれません。
以上のことを頭にいれながら、この大きな業界に携わる書店員として働いていただけまたら、 本好きの人間としてこれ以上うれしいことはありません。
どうかよろしくお願いいたします。

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