金融商品会計
売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいう。ここでいう「時価の変動により利益を得ること」とは、短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有することをいい、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われることをいう。売買目的有価証券の典型的な例としては、金融機関の特定取引勘定に属する有価証券、運用を目的とする金銭の信託財産構成物である有価証券が挙げられる。
一般に、企業が保有する有価証券を売買目的有価証券として分類するためには、有価証券の売買を業としていることが定款の上から明らかであり、かつ、トレーディング業務を日常的に遂行し得る人材から構成された独立の専門部署によって売買目的有価証券が保管・運用されていることが望ましい。しかしながら、定款上の記載や明確な独立部署を持たなくても、有価証券の売買を頻繁に繰り返している場合には、当該有価証券は売買目的有価証券に該当する。
ただし、定款上の記載や明確な独立部署を持たなくても、有価証券の売買を頻繁に繰り返している場合には、有価証券は売買目的有価証券に該当する。
満期保有目的の債権とは、満期まで保有する意図をもって保有する社債その他の債権をいう。ここでいう「満期まで所有する意図をもって保有する」とは、企業が償還期限まで所有する積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう。保有期間が漠然と長期であると想定し保有期間をあらかじめ定めていない場合、又は市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される場合には、満期まで所有する意思があるとは認められない。また、満期まで資金繰り計画等から見て、又は法律等の障害により継続的な保有か困難と判断される場合には、満期まで所有する能力があるとは認められない。
なお、満期まで所有する意図は取得時点で判断すべきものであり、一旦、他の保有目的で取得した債権について、その後保有目的を変更して満期保有目的の債権に振り替えることは認められない。
子会社株式については、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づき、個別財務諸表上、取得原価をもって貸借対照表価額とする。また、関連会社株式については、他企業への影響力の行使を目的として保有する株式であることから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であり、個別財務諸表上、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
なお、子会社株式は、連結財務諸表においては、子会社純資産の実質価額が反映されることになる。また、関連会社株式は、連結財務諸表においては、持分法により評価される。
その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債権、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいい、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有する。その他有価証券については、金融資産の評価額に関する基本的な考え方に基づき、時価をもって貸借対照表とするが、その他有価証券は直ちに売却することを目的としている物でないことに鑑みると、その他有価証券に付すべき時価に市場における短期的な価格変動を反映させることは必ずしも求められないと考えられる。したがって、その他有価証券の決算の時価は、原則として、期末日の市場価格に基づいて算定された価額とする。ただし、継続して適用することを条件として、期末前1ヶ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることもできる。