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【対談】奈良先端大 × アカリク:大学院生のキャリアパス拡大に向けて


対談は「アカリクラウンジ 奈良先端科学技術大学院大学店」内で行われた
写真左より 奈良先端大 塩﨑学長、アカリク 代表 山田

アカリクは2024年7月18日(木)、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)と連携協力に関する協定を締結いたしました。これに伴い、同日、奈良先端大 塩﨑学長とアカリク代表の山田が対談を行いました。

対談では、協定締結に関する話題だけでなく、大学院生のキャリアパスや就職活動、それらを取り巻く社会の在り方などについて、双方の視点からお話を伺いました。

― まずは塩﨑学長より、本協定締結にあたってのご期待をお聞かせください


塩﨑学長
 本学は「大学院大学」という特徴がある大学です。修士課程や博士課程の学生のキャリア支援は、学部生対象のものとは全く異なります。
 文科省や経団連で博士人材の活用が議論される中、今回のアカリクとの連携協定の締結を起点とした連携で、博士人材のキャリアパスがさらに拡がることを期待しています。特に今日、理工系人材や高度情報人材のような専門性を持つ学生において、伝統的なアカデミックな進路に限らずキャリアパスを拡大することは、大学や国にとっての大きな課題と認識しています。

― では山田社長、アカリクの概要説明と本協定締結にあたっての意気込みをお願いします

山田社長
 2024年10月から第16期を迎えるアカリクは、創業から一貫して大学院生および研究者のキャリア支援をしてきた会社です。私は二代目の代表となりまして、創業者が博士課程を満期退学後にアカリクの前身となる会社を立ち上げた当時は、民間企業が学部生を大量に一括ポテンシャル採用する一方、大学院生、特に博士課程の学生は、大学院を出たあとはアカデミアの道へ進むのが既定路線でした。実際に創業者の周囲の大学院生の多くも、非常に優秀だが民間就職に興味はなかったようです。そのような「ねじれ」を解消したいという思いがアカリク創業の背景にあります。

 アカリクのコーポレートミッションは「知恵の流通の最適化」です。大学院生をはじめとする高度専門人材がその知恵をもって産業界で活躍すれば、産業界でさらに良い製品やサービスが生まれ、それにより大学院への進学者が増え、日本の研究レベルがさらに上がるといった好循環が生まれるのでは、という考えが事業のルーツです。
 今回の提携では、奈良先端大のキャリア支援室の負担軽減はもちろんのこと、奈良先端大の学生のみなさんにとっても、研究を第一とする学生生活と就職活動を両立してもらえるような支援をしたいと考えています。奈良先端大と民間企業の橋渡しとしてアカリクが機能し、産業界にとっても大学にとっても良い状態を実現したいと思います。

― 奈良先端大における学生の就職活動の現状はいかがでしょうか

塩﨑学長
 企業の人手不足や理工系人材へのニーズの高まりが背景となり、奈良先端大の就職率は既に高く、伸びしろはあまりありません。ただし、学生の就職活動の「クオリティ」はさらに高められると考えています。学生にかかる就活の負担が軽減されれば、学生は研究に十分集中しつつも、同時に納得いく就職活動を行うことができます。
 大学院卒の活躍の場が広がることが重要です。大学院で研究したことは、その分野でしか活用できないわけではありません。研究という、いわば「トレーニング」の中で、課題発見や関連する情報の収集、その情報の適切な評価、精度の高い仮説を立てるための思考法といった、大学院生として得たスキルは非常に高度だと言えます。もっと多様なシーンで活躍できるはずです。大学院生にはその自信を持ってほしいし、より多くの企業にその高度なスキルを認知してほしいと思います。

― 大学院卒のキャリアパス拡大のための取り組みが今後重要になりそうですね

山田社長
 大学院卒の活躍の場はまだまだ拡げることができると考えています。アカリクでは、大学院生の持つ高いトランスファラブルスキルを、企業にもっと理解してもらうための機会を創出するための取り組みを継続的に実施しています。また、ジョブ型雇用の拡大により、大学院での研究テーマだけでなく、その周辺領域におけるマッチングも増えています。大学院生には、研究のスキマ時間を使って、アカリクラウンジでのイベントなどを通じて積極的に視野を広げてほしいと思います。

塩﨑学長
 大学院生は、実際に大学院卒が民間企業でどのように活躍しているかイメージを持ちづらいという課題があります。そのため、大学院生へのキャリア教育におけるアカリクとの連携も、奈良先端大にとっては非常にプラスです。

― ジョブ型雇用の広がりも民間就職へ進む大学院生の増加に関連しているのですね

山田社長
 ジョブ型雇用であれば、入社後の仕事が明確なので、専門性を活かしたキャリアを望む大学院生はエントリーしやすく、また入社後のミスマッチも起こりにくいと考えられます。メンバーシップ型雇用、例えば技術系総合職での採用は、専門的な知識やスキルを武器にしたキャリア形成を望む大学院生にとっては、配属先が希望通りにならなかった場合、早期離職などの問題につながるケースもあります。

― 奈良先端大の大学院生の就活にはどのような変化があるのでしょうか

塩﨑学長
 就職率という数字に現れているように、民間就職に対する学生の意識は高まっています。民間就職という選択肢の難易度に対する意識が変化しており、アカデミアのキャリアだけでなく、民間企業への就職が普通の選択肢として認識されてきたようです。奈良先端大は大学院大学であるため、様々な大学や学部、国々から学生が集まっています。そのため学生は、同級生や先輩・後輩との交流の中で、自身のキャリアについて多様な考え方に触れる機会を得ることができ、キャリアへの考え方に柔軟性が生まれています。奈良先端大には、既定路線にとらわれない、挑戦的かつ主体性を持った学生が集まっています。

山田社長
 他大学では就活の時期を後ろ倒しにするために大学院へ進学するケースもある中で、奈良先端大へ入学する学生の大学院進学理由は全くそれと異なりますね。元々所属していたコミュニティがリセットされるにもかかわらず奈良先端大へ入学するわけですから、学生の覚悟が違う、という印象を持っています。

― 全国の大学院と比べて奈良先端大はどのような大学院なのでしょうか

山田社長
 何より、研究に没頭できる環境が整っていると感じます。寮と大学が一体になっていることもそれを特徴づけていますね。また、強い研究への思いとコミット力を持ち、まじめで純粋な学生が多いという印象もあります。

塩﨑学長
 学部生がいないというのが大きな特徴です。それにより、大学院生に良い研究をしてもらうことに対して、大学全体で取り組むことができます。

― アカリクの事業活動の中で、企業からの大学院生採用ニーズの高まりは感じますか

山田社長
 じわじわと、確実に高まりつつあります。例えば、博士人材を採用した企業のほとんどが、その後毎年博士人材を採用したいと仰ります。博士人材は高いトランスファラブルスキルを有していて、例えば自走力が高い方が多く、また1を教えれば10を理解できるという声もあります。大手企業のみならず、中小企業やベンチャー企業など、いろいろなフィールドで活躍できるスキルを持っています。ただし、大学院卒や博士人材の有する専門性にとどまらないスキルを理解している企業は、全体の中ではまだ稀なので、アカリクのミッションとして取り組んでいきたいと考えています。

― 塩﨑学長はアメリカでの豊富な経験をお持ちですが、比較していかがでしょうか

塩﨑学長
 まず企業の経営層と話したときの感触が違います。アメリカのトップ企業の経営層のうち約7割は大学院卒と言われていますが、日本は2割弱にとどまります。一方日本の経営層と話すと「基礎研究をしてないから大学院卒は採用していない」と言われることがあります。日本においては、大学院卒の持つ能力への理解はまだまだ浸透していないと感じます。
 学生の、自身のキャリアパスに対する考え方にも違いがあります。アメリカでは、産業界で活躍する院卒が増加傾向にあるため、学生は非常に広い視野を持っています。IT分野や半導体製造などの成長産業を博士号取得者がリードするイメージも強く、起業を視野に入れる学生も少なくありません。日本においても理工系人材に対するニーズが強まる今日の状況はチャンスであり、それぞれの考え方が変わるきっかけになってほしいと思います。

― では最後に、今回の連携協定の締結をふまえ、今後の具体的な展望や取り組みをお聞かせください

塩﨑学長
 アカリクには大学と産業界のインターフェースとしての活躍を期待しています。大学と産業界は、これまでコミュニケーションが十分になされていなかった部分があり、まだまだ相互理解の促進が必要です。アカリクには、そのようなアカデミアと産業界をつなぐプラットフォームとなってほしいと思います。大学院生や博士人材が、実際に産業界でどういう活躍ができるのか、民間企業にさらに理解してもらいたい。

山田社長
 今回の提携を契機として、大学と産業界の接点をさらに増やすための取り組みを推進したいと思います。例えばキャリア教育カリキュラムの共同制作や、アカリクラウンジを活用した、それぞれの価値観を共有するためのイベントの開催など、新しいムーブメントを作っていきたいですね。そのような取り組みを通じて、企業の経営層や人事の方々に、大学院生・博士課程の学生のもつ能力の高さを知ってもらうことで、大学院生の就職の間口をさらに広げていけると考えています。

関連リンク

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