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石田克史『信念の経営』

半年くらい前にご自身で会社をやられている大学の先輩から紹介して頂き、やっとのことで積読してたのを読んでみました。
ジャパンエレベーターサービスという会社をご存知でしょうか。プライム市場に上場している唯一の独立系エレベーターメンテナンス企業です。
独立系というのが肝になります。日本のエレベーターメンテナンス市場は、基本的に三菱電機、日立製作所、東芝エレベーター、日本オーチス、フジテックの5大メーカーによる寡占マーケットです。これは新たな建物が建設される際にこれらのエレベーターメーカーが設置し、その後のメンテナンスもメーカーが請け負う、そしてこのメーカー同士は他社メーカーのメンテナンスに手を出さないという業界の掟があり、日本のエレベーターメンテナンス市場はサプライヤーの言い値で運営されている(競争が働いていない)という現状があります。

これに対してジャパンエレベーターサービス社は、メーカー業とメンテナンス業を切り分けて運営するという世界標準を日本にもたらすことを目指し、メンテナンス品質を担保しながら価格をおよそメーカー系の半値で提供するという独自のポジショニングを取っています。

2017年にIPOしてから一度もガイダンスをミスしたことはなく、基本的に毎回上方修正。そのため株価も右肩上がりで非常に順調に見える会社です。本書はそんなジャパンエレベーターサービスの創業者である石田さんによる、会社設立からIPOまでの道のりを描いた自伝です。

お父様のビルメンテナンス会社が倒産したことに端を発して起業を決意したこと。事業拡大時にCFのコントロールに苦労し消費者金融でお金を借りていたこと、管理部門の人不足の際におのでらのおのでらさんが人を送ってくれた話など、直面した苦労とそれをどう乗り越えたかについてのエピソードが多く語られています。

個人的には、最初自社がターゲットにすべき建物の決め方(得意のエレベーターメーカーを4つ決めた)、そのターゲット顧客をどう特定するか(ビルを回ってエレベーターの1階にある標識を確認する)、どう決裁者にアプローチするか(上の方だけ広い間取りのビルにはオーナーが住んでいるのでピンポンする)などの話が非常に勉強になりました。結局どんな業界でも、この辺の営業の勘所が大事だよなぁと思います。

今後はエレベーター内広告事業にも進出とのこと。当初は市場がなかったので、広告のモデルについては何も考えてなかったようですが、TAMの議論はこういった拡張性を考えた時にどのくらい意味のあるものなのか、もはやその拡張性を加味した議論であるべきなのか、などなどは時間を取ってよく考えてみたいなぁと思いました。

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