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“独書”よりも拡がる世界-ブックナビクラブ-

7月2日(土)にオンラインで開催された、メンバーズ・コミュニティ(略してMC)のブックナビクラブでシェアされた本を紹介します。
ブックナビクラブは、「自分の好きな本を持ち寄って、“この本の何が良いのか?”を紹介する」という、とてもシンプルな構成です。
6冊の本を紹介します。

著者のエマニュエル・トッド氏は、フランスの歴史人口学者・家族人類学者で、国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、ソ連崩壊、米国発の金融危機、アラブの春、トランプ勝利などを"予言"されたと言われる方です。
この本を紹介してくださった志治さんは、「ロシアのウクライナ侵攻の要因が複雑に絡み合っていることを知った。日本での報道は一部であり様々な視点で出来事を知る必要を改めて感じた。」とのコメント。この書籍は日本のみで緊急出版されたとのことです。

次に、この本を紹介してくれた高泉さんは、「本当に米国の高校生は、こんなに難しいことを勉強しているのかな? 理解できるのかな?」という素朴な疑問が湧いたとのことです。例えば、
・経済成長は良いことか?
・ダフ屋で見えてくる闇市場
・失業の基本 等。
高泉さんの感想は、
「学ぶ生徒も大変だが、教える先生はもっと大変。」
「この本の内容は、お金を貯金することではなく、投資することが前提になっている。」
「サラリーマンではなくビジネスマンという発想が前提で、労働市場の流動化が日本とは全く違うので、失業の定義が広いことも興味を持った。日本のように、“失業=悪”では決してないと感じた。」などなど。
最後は、「世界の教科書を考える時間があってもいいかもしれない。その国の本当の姿(価値観)が見える気がする。」というコメントでした。

私が紹介した本は、1977年に出版された山本七平氏の著書です。
リアルとオンラインの違いは、空気を読みやすい・読みにくいことと言われます。そこでその空気とは何かを知りたくて、この本にチャンレジしました。
残念ながら難解で私には理解不能な部分が多々ありましたが、「解釈本が出ているので、それを参考にすると良いよ!」というアドバイスをもらい、まずは解釈本で内容を確認したいと思います。
私が理解した範囲では、空気を作る要因は臨在感的把握だとのことです。日本人は対象に感情移入をして絶対視することで空気を作るとのこと。一方で、空気を打ち破るものが水(現実の指摘)とも記されていました。俗に言われる「水を差す」ことです。水を差すことができる自由の存在が大切とのことです。

こちらを紹介してくださったのは三林さんです。
「著者は70代の学者と40歳前後のMBAホルダーの実務家です。よく議論されるテーマですが、1冊の本としてまとまっているのがよい。」と紹介いただきました。
ベンチャーキャピタルの厚みが違うなどの日米の違いはありますが、一番の問題は日本では人が流動化しないこと。シリコンバレーには“バカの増殖”という言葉があって、『放っておけば既存社員の自己保身から、自分より能力レベルの低い人を採用する動機が働き、人材レベルがどんどん落ちていく。GAFAはいずれもそれを回避するしくみを作っている』というところが一番ささりました。」
「日米の差をあらためて思い知らされ、日本の現状と将来に暗い気持ちになりました。」とのコメントでした。

「今まで紹介された本とは系統が違う本ですが。。。」と川本さんが紹介してくださったのは、東京藝大の学生たちの凄さをコミカルに描いた『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』です。この本をもとにコミック版も出版されているとのことです。
著者の二宮敦人さんの奥さまが東京藝大の彫刻科の学生だったとのこと。奥さまの日常生活からこの本のアイデアが生まれたとのことです。
「とにかく型破りで発想が違う、突き抜けた人たち。日常生活では出会えない人たちの世界を垣間見れて楽しい本です!」とのコメント。
「一方で、伝統を重んじる分野や業界では、新しい表現が受け入れられ辛く、日本より先に海外で評価されて逆輸入されるケースもあると聞きました。」とのコメントから、“出る杭は打たれる”的な状況は芸術の世界にもあるのかなと、日本の残念な一面を垣間見た気がしました。

最後に紹介するのは、ライブラリー事務局の清水さんがシェアしてくれたプレディみかこさんの著書です。
今までの皆さんのコメントに呼応する形で、内容を紹介してくれました。

高泉さんの『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』に呼応して・・・
英国の公立中学校では、「シティズンシップ教育」というカリキュラムがあり、著者の息子さんが通う学校では「ライ フ・スキルズ」という授業にシティズンシップ教育が組み込まれているそうです。そこでは、議会政治の基本、自由の概念、法の本質、司法制度や市民活動について学ぶ時間があるとのこと。そしてその科目のテストで「エンパシーとは何か」という問題が出たそうです。日本ではそのような問題がテストで出るだろうか?と考えると、米国だけではなく英国と比べても、「日本の教育はこれで良いのか?」と皆で絶句をしました。

次に熊田のコメント「日本人は対象に感情移入をして絶対視することで空気を作る」に呼応して・・・
エンパシーについて紹介してくれました。エンパシーの語源の変遷を辿ると、「感情移入」と訳されることもあったと本書には書かれています。エンパシーとは「他者の感情や経験などを理解する能力」で、「同情」や 「共感できる相手への理解」であるシンパシーとは異なるとのこと。
エンパシーは、同じ意見や考えを持たない人、共感できない相手だとしても、相手の立場を理解する力のことであり、過去にエンパシーを批判した知識人たちは、その負の側面として「相手に感情移入して自己を明け渡してしまう」ことを問題視しました。
確固たる自己がない場合は、相手に支配されてしまうことになる。エンパシーは個人を組織に従属させるツールにもなり、全体主義に繋がってしまう恐れがあるそうです。そのために、確固たる自己を持つことが重要とのことでした。 空気に支配されてしまうのは、自己が弱いためでしょうか?

三林さんや川本さんのコメントにあった、「シリコンバレーの“バカの増 殖”」や「優秀な人材の逆輸入」への呼応として・・・
「人に迷惑をかけてはいけない」という日本独自の考え方の解釈を紹介してくれました。これは一見「人への思いやり」のようですが、「自分も迷惑をかけられたなくない」という心情の裏返しとのこと。この延長線上に、他人への許容度が低くなり、その結果“出る杭は打たれる”という状況が 発生するとのこと。

参加いただいた皆さんから様々な本を紹介いただきましたが、最後に清水さんが紹介してくれた『他者の靴を履く』が、総まとめをしてくれた結果となりました。

皆さんは、紹介してくれた本を選んだ問題意識には、共通点が多かったのかもしれませんね。
その結果、独りで読むよりも、幅が広がり、深堀りもできました。
皆さん、どうもありがとうございました!

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子


#アカデミーヒルズ #利他 #エンパシー #空気を読む   #バカの増殖 #読書






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