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【開催レポート】De-Silo × academist クロストーク(2024年9月3日)

2024年9月3日、オンラインイベント「De-Silo × academist クロストーク:アカデミアの未来と、次の一歩を考える」(Open academia Lecturesプレ企画)を実施しました(開催趣旨文)。以下はその開催記録です。

「アカデミックインキュベーター」として調査や研究者の伴走支援、イベント企画など多岐にわたる活動を展開するデサイロと、「開かれた学術業界(Open academia)」をVisionに掲げ、学術系クラウドファンディングを中心に10年間活動してきたアカデミスト。民間の立場で研究者と社会をつなぐ両団体の、初のコラボイベントとなりました。当日は、約60名の方にオンラインで視聴いただきました。

【当日のプログラム】
20:00- 趣旨説明
20:10- 『DE-SILO RESEARCH REPORT:人文・社会科学の未来を拓く30の論点』の紹介(デサイロ 小池真幸氏)
20:20- De-Siloの挑戦(デサイロ代表理事 岡田弘太郎氏)
20:35- academistの挑戦(アカデミストCEO 柴藤亮介)
20:50- クロストーク「サイロを打開し、開かれたアカデミアを目指す」(デサイロ 岡田氏・小池氏 × アカデミスト 柴藤)

DE-SILO RESEARCH REPORT

まず、デサイロ編集統括の小池真幸さんより、デサイロが7月に公開された『DE-SILO RESEARCH REPORT:人文・社会科学の未来を拓く30の論点』の内容を紹介いただきました。

小池さんは、編集者として人文・社会科学の研究者と関わる中で、アカデミアの知が持つ大きな可能性とともに、今のアカデミアをとりまく課題に関心が向くようになったといいます。その小池さんを中心に、人文・社会科学の歴史・現状・論点を取りまとめた今回のレポートは、全体で15万字を超える大部に。今後のアクションにつながる第3章の「30の論点」を整理していく上では、アートのなど他の業界で成立しているエコシステムとのアナロジーを意識したといいます。また、一口に人文・社会科学といっても分野によっておかれた状況は多様であること、また、100年、200年後に価値があるような学術知の価値を重視しながらも、その価値を現在の社会にも開いていくバランスの重要性を常に意識しながら、このレポートの制作に当たられたとのことでした。

小池真幸さん(デサイロ)

デサイロとアカデミストの挑戦

続いて、デサイロ代表理事の岡田弘太郎さんと、アカデミストCEOの柴藤亮介から、両団体の活動紹介がなされました。

2022年10月に設立された一般社団法人デサイロは、主に人文・社会科学の研究者を支援する「アカデミックインキュベーター」として活動中。今の社会が置かれている状況に対し人文・社会科学の「豊かな知」のポテンシャルを活かしていく取り組みを、岡田さんは「概念の社会化」と表現します。概念の社会化を実践すべく、研究者とアーティストが協働し作品制作やパフォーマンスを行なうプロジェクト「DE-SILO EXPERIMENT 2024」の開催や、若手研究者をサポートする「デサイロ アカデミックインキュベーター・プログラム」の運営等、これまでにない様々な取り組みに挑戦してきました。岡田さんは、「民間で、機動力をもって動ける立場を活かして、様々なアプローチを、仮説を持ちつつ「実験」していくこと重視している」といいます。

岡田弘太郎さん(デサイロ)による説明

続いてアカデミスト柴藤より、10年を超えたアカデミストの歩みの時系列での紹介を行いました。「研究者の方々が自分の研究を魅力的に語ってくれる」仕掛けとしてクラウドファンディングを始めた経緯、研究者にメリットがある形で持続的な社会への発信を促す仕組みづくりの模索、そして、ちょうどこの日がキックスタートとなったacademist Prize第4期「1000 true fans」へと、その都度挑戦と発見を繰り返しながら進んできました。academist Prize事業を展開する中で「異分野・異業種の方々との繋がりをつくることの価値」、そして産学連携などにおいては「目的がまだ明確に設定されていない交流の場」が大事だとの気づきが共有されました。大学ができること、アカデミストならできることなど、互いの強み・弱みの「マップ」を意識しながら動いていくことが重要ではないかという見解が述べられました。

柴藤亮介(アカデミスト)

クロストーク:サイロを打開し、開かれたアカデミアを目指す

イベントの最後には、登壇者によるクロストークを行いました。

中心となったトピックの一つは、アカデミストやデサイロのように、研究者と社会を「つなぐ」立場の人をどう増やしていけるのかについて。研究分野や研究者の多様性を考えると、そこに伴走する人も、それぞれ得意分野や問題意識が異なる多様な人々が、その個性を活かすのがよいのではないか。そこでは「編集者」のスキルセット・マインドセットに一定の相性の良さがある。一方で、事業開発(ビジネスデベロップメント)のスキル・経験のある人も求められ、そうした方々にとって「難しくもやりがいのあるフィールド」として参画が期待できるのではないか、といったことが登壇者の経験に基づく「仮説」として共有されました。

当然、このような活動が持続可能になるためには、資金が必要です。デサイロ、アカデミストともに、これについてもいくつものアイディアを持ち、現に取り組んでいたり、近い将来実行に移そうとしたりしています。柴藤からは、「とくに2020年代に入ってから基礎研究者とつながる機会を求める企業が増えている。デサイロやアカデミストのような活動に取り組む人が増えるほど、アカデミアへのお金の還流が生まれる感触がある」との見立てが述べられました。

最後に、「一個人としてできることはありますか?」という視聴者の方からの問いかけをいただきました。これに対して、アカデミストが目下始めた1000 true fansにぜひ参加し、若手研究者への金銭的支援にとどまらない様々な接点での関与を考えてみてほしいとのコメントや、いち支援者としてだけではなく、企業などの所属組織で熱量を持って少し行動を起こしてみることの有効性、また、副業が普及していくなかで、本業を持ちつつデサイロやアカデミストのような組織にパートタイムで関与していく可能性も今後開けてくるのではないかという提案がなされました。

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「今から自分たちが始められることは何か」という目線で考えることを目指した本企画でしたが、事後のアンケートからは、「参加者が次へのステップへ取り組めるヒントになった」「共感できる活動だった」「小さな動きがネットワーク化されると、社会へインパクトのある動きになっていくのではないか」などの前向きなリアクションをいただきました。

今後、デサイロ、アカデミストとも、さらなる思い切った「実験」を展開していきますし、本日のような議論や知見をさらに多角的に深めるべく、アカデミストではOpen academia Lecturesを開催します。こうした機会も活用いただきながら、ぜひそれぞれの立場で「次の一歩」を踏み出し、この運動を共に盛り上げていただければ幸いです。

文章:丸山隆一(Open academia Lectures 企画担当)


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