【令和版ニューディール】:日本の景気を100%回復させるための政策
1.人々は、何を基準に景気が良いと判断するのか?
まず、世の中には、景気動向指数等、景気の良さを判断するための様々な経済指標が存在する訳ですが、私は、景気が良いかどうかを判断する基準は、"国民の給料や所得が増えたかどうか"によってのみ、決定されるべきだと考えております。
そう考えれば、上図(図1)の通り、先進国の中で、日本だけが、過去30年間実質賃金が全く上がっていない状況でありますから、この30年間、全く景気が良くなっていないと断言出来る訳です。
実際、景気動向指数だけで判断してしまえば、下図(図2)でお解りいただける通り、2024年現在は、アベノミクスの直後、そして、昭和のバブル景気の頃と、同程度に景気が良いと言えてしまう訳です。
しかし、殆どの日本国民は、"今の日本は景気が良い"と思っている訳がありませんし、実際、Yahoo Japanが、2024年2月に実施した「景気の動向をどう感じていますか?」という調査では、71.8%が、"景気が悪くなっている"と答えております。
ですから、本当に、大多数の国民が、"景気が良くなった"と感じるためには、政府主導で、全ての国民の所得を増やすような政策を実行する以外に無いんです。
2.具体案
①消費税や社会保険料を引き上げ、所得の再分配を実施
早速、具体案となりますが、"消費税や資産課税、社会保険料を可能な限り増税し、年一回の頻度で、低所得者層に現金給付を行う"というものになります。
そして、その低所得者層とは、具体的に、国民年金受給者、非正規労働者を想定しております。
更に、本政策実施のために、徴収した税金や社会保険料は、全額、"低所得者支援税"という目的税とし、政府が、低所得者のの所得を増やす事以外の用途に使用する事を、完全に禁じるべきであると思います。
②赤字国債を用いて、大胆に、若者に財政出動を実施する
そして、赤字国債を用いて、若者に対し、現金給付や社会保険料の減免等、積極財政を行い、インフレ経済を作り出す事も重要です。
経済成長、言わば、イノベーションというのは、若者に富が蓄積される事によってのみ起こり得るので、若者に対し、財政出動を行う事が、重要となります。
更に、インフレを引き起こすという事は、貯蓄をする者が損をする環境を作るという事であり、ベンチャー起業家等の若者に対し、投資が喚起されるような環境を作る上でも、インフレ経済を維持する事は重要となります。
3.消費が、経済や景気を牽引する時代は終わった
前回投稿したnoteにおいては、今の日本は、成熟経済に至っているため、基本的に、国民は、所得が増えたとしても、消費に回す事は無く、貯蓄や投資を行うという事を説明いたしました。
そして、それは、上図(図3)で、家計の金融資産が右肩上がりで伸びている一方で、下図(図4)では、消費者物価指数が、過去30年間殆ど横ばいであり、消費者物価指数は、消費の規模を示す指標でもありますから、消費の規模は、30年間全く伸びていないという事が言える訳です。
そして、こういった現象は、税金や社会保険料が高過ぎるから起こっている訳ではないと言い切る事が出来ると思います。
何故なら、紀元前の人類史においても、通貨の蓄財や金融資産への投資を行っていた者が居たとされておりますし、そして、産業革命以降、イギリスやアメリカを中心に、株式投資が流行っていた訳で、その当時は、そこまで高額な税金が、課されていたとは、考えられないからです。
つまり、現在の日本経済のように、一度、経済が成熟してしまえば、国民負担率等の外部的な要因に依らず、基本的には、消費によって、景気が牽引される事は無くなってしまうと考えております。
ですから、消費によって、景気を牽引をさせるのではなく、"国民の所得を増やす事によって、景気を牽引させる"事こそが、重要であると言える訳です。
4.低所得者程、消費性向が強い
ですが、現代の日本において、消費よりも、貯蓄や投資を指向する国民が増え、いくら、消費が、経済に与える影響が減ったと言っても、消費が、経済を活性化するという事は、疑いようのない事実です。
そして、上図(図5)でお示しした通り、一般的に、高所得者より、低所得者の方が、所得を、消費に回す傾向が強いとされております。
例えば、10兆円を、上図で言えば、第Ⅴ階級に属する高所得者に給付するより、第Ⅰ階級に属する低所得者に給付を行った方が、1.5兆円多く消費に回るという事になります。
なので、"消費を活性化する"という目的を果たす意味でも、富の再分配を実施し、低所得者の所得を増やす必要があると言える訳です。
そして、低所得者の消費が増えれば、企業の収益が上がり、結果的に、ボーナスが増える事等によって、高所得者にとっても、恩恵をもたらされる結果となる訳です。
5.社会保障改革(医療費の削減)
そして、従来から申し上げている通り、社会保障(医療制度)改革を行い、医療費の削減をしなければ、いくら増税したとしても、全額高齢者の社会保障費(主に医療費)に消えてしまい、本案の政策を実施するための財源が確保出来ません。
また、医療制度改革無しに、増税を行ってしまえば、大企業や富裕層、高所得の納得が到底得られないため、医療費の削減は、本案の実行に際して必須条件となります。
そして、具体的には、以下の2つの改革を実施すべきであると考えております。
①NHS型の医療サービスを導入し、高齢者等、労働者以外の国民については、原則、公的病院のみを利用して貰うような改革を行う
詳細につきましては、お手数ですが、以下のnoteをご覧ください。
②延命治療は、保険適用外にし、全額自己負担にする
更に、現代においては、医療技術が日々発展している事もあり、人間の寿命を、人工的に伸ばせるようになっている訳です。
しかし、そもそも、日本の医療サービス自体が、税金を原資に提供されている訳で、その税支出を伴う医療サービスによって、高齢者を無理矢理延命させてしまえば、年金・介護・医療という3方面において、支出が際限なく拡大してしまう危険性がある訳です。
実際、そのせいで、今の日本国民は、何の恩恵も無く、高い税金や社会保険料を支払わされていると言える側面もあります。
そして、そういった事が、行われ続けてしまえば、納税者達も持ちませんし、何より、日本政府自体が、破綻に追い込まれる可能性も高まる訳です。
ですから、医療サービスに、税金を一円でも投じている以上、何らかしらの上限は必要であり、延命治療については、全額自己負担にするという事は、今後、国民皆保険を維持するにあたっても、必要最低限の改革であると思っております。
6.負の所得税(給付付き税額控除)やベーシックインカムについて
給付付き税額控除との相違
アメリカ・フランス・カナダ等の海外諸国においては、給付付き税額控除、所謂、負の所得税と呼ばれるような、"給付額について、まずは税額から控除し、税額から控除しきれない額を実際に給付するという仕組み"が、所得税に組み込まれている訳です。
しかし、個人的には、一概に、"低所得者"という雑な括り方をしてしまえば、給付の対象者が広がり過ぎてしまうという点について、本案とは異なると思っております。
そして、税金や社会保険料を減税という形にしてしまえば、企業に対し、内部留保に回すか、労働者に還元するか等という選択肢を与えてしまう結果となるため、現金給付という形式を取る方が良いのではないかと考えております。
ベーシックインカムとの相違
更に、従来のベーシックインカム論と、一部類似する点がある事は確かですが、やはり、ベーシックインカム論では、給付の対象が、全国民とされている事や既存の社会保障制度を、全て撤廃するという暴論も含まれている事からも、本案とは、かなり相違がございます。
特に、私は、社会保障制度については、可能な限り、現状維持すべきであると考えており、前述の改革案も、現状維持をする上で、何が必要かという前提で、提唱しておりますから、その点については、従来のベーシックインカム論に対し、賛同できる点は全く無いと考えております。
7.アメリカンドリームの存在意義
私は、アメリカンドリームとは、チャレンジした者が、何回失敗してもやり直せるようなセーフティネットの役割を果たしていると思っております。
確かに、アメリカは、公的社会保障は薄いとされておりますが、その一方で、ベンチャーキャピタルが多く、寄付文化も根付いているため、やる気を持った、才能のある人々にとっては、民間によるセーフティネットがしっかり敷かれていると見做す事が出来ると思います。
その一方で、日本においては、社会全体が、官僚組織的であり、一度失敗したら、容易に再復帰は図れないような硬直性があると思えてしまいます。
その原因は、様々であると思いますが、個人的には、現役世代の労働者に対するセーフティネットが、十分でない事が、その一因となっているのではないかと考えております。
本来、社会保障というのは、"労働者のためのセーフティネット"であるはずが、これまでの日本においては、高齢者のためのセーフティネットと化してしまっていた訳です。
そして、元々、日本と言うのは、富裕層や大企業に対し、高い税金を課している事から、格差が比較的小さい国であり、更には、事実上、官僚が国家を統治していると言えるような、官僚国家でありますから、公的機関こそが、挑戦者のためのセーフティネットをきちんと用意する必要があると考えられる訳です。
ですから、本案のように、労働者のためのセーフティネットを構築する事こそが、雇用の流動化やベンチャー起業の促進に、大幅に寄与する結果と成り得ると考えております。
まとめ.
やはり、岸田元首相の掲げた新しい資本主義や、石破茂首相の掲げる方針等、あるいは、各野党の主張を俯瞰して見ても、細かい違いはあるものの、大方、ほぼ全ての政党が、本案のような改革路線を目指していると言って、過言では無いと思っております。
ただ、本案は、労働者のための改革である事から、本来、資本家に寄った政党である自民党が掲げるべき政策ではなく、自民党のバックに着いている各企業や利益団体が、本案を実現を阻む可能性が高いと言えますから、野党のみが、実現出来る政策であるという事が出来る訳です。
ですから、本案にご賛同いただける方は、そういった点も踏まえ、選挙等、今後の政治活動の判断材料にしていただければと思っております。
参考文献.
・日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)