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今後、日本の医療制度はどういった形に転換されていくのか?

まず、私個人の意見として、今後の日本においても、現状の医療体制は、可能な限り、維持すべきであると思っております。

何故なら、アメリカ社会であれば、救急車を呼ぶだけで5万円掛かったり、簡単な手術であっても、1500万~数億円を一度に請求されてしまうという事が、当たり前に起こっており、それに比べれば、全国民が、ある程度の税金や社会保険料を負担する必要があったとしても、一般庶民でも、気軽に医療サービスを受けられるような日本の医療制度を維持する事は、様々な観点から見ても、望ましいと言えるからです。


ですが、これまで、過剰に社会保障給付を行い過ぎたり、日本政府の放漫財政が続いてきた結果、財政赤字が膨張し続け、国の借金が、約1300兆円に達する程の政府債務が膨れ上がった状態になっている訳で、国債費等の観点から言っても、何らかの形で、改革をしなければ、現状維持する事は難しいと言える訳です。

ですから、本noteにおいては、"今後、日本の医療制度は、一体どんな形に転換されていくのか?"という事について、私見を述べさせていただきたいと思います。




1.現状を維持する事は殆ど難しい

まず、過去のnoteにおいても、度々言及しておりますが、膨らみ続ける国債費が、今後、最大のネックポイントとなる事は間違いありません。

これまで、日本の社会保障制度というのは、大量の赤字国債を発行し、その費用を補填する事によって成り立ってきた訳です。

しかし、今後も、国家予算に占める国債費の割合が増えていくと、益々、国家の純歳出に使えるお金は減り続けていきます。

なので、今後は、赤字国債は殆ど頼りにならなくなるという前提で考えれば、現状の医療制度を維持する場合、消費税を20%~40%に引き上げたり、社会保険料を更に増額する等の施策が必要とされる可能性が高いと言える訳です。


ただ、消費税等の各種税金を引き上げたり、社会保険料を引き上げたとしても、必ずしも、政府の歳入が上がるとは限らず、むしろ、負担増に耐えきれなくなった中小零細企業が次々に倒産していき、結果的に税収が減ってしまう事も考えられます。

また、日本国民自身も、これ以上の税や社会保険料負担について、素直に受け入れるとは到底思えません

ですから、結果的に、どんな形になるにせよ、何らかの改革を行わねば、現状の医療制度を維持する事は、ほぼ100%不可能に近いと言える訳です。


2.基本的には、イギリス・北欧型の医療サービス体制になる可能性が高い

日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一 (講談社+α新書)より引用

まず、一番容易な転換先としては、韓国型の医療制度が挙げられ、自己負担額を増やしたり、保険適用範囲の縮小するというような改革を実行していく事が考えられますが、実際問題、その改革を実行したとしても、大して医療費の削減を見込む事が出来ず、また、自己負担額が増加してしまえば、受診控えも進んでしまうと考えられるため、個人的には、余り有意な改革ではないと思っております。

なので、現状、一番可能性のある改革の方針として、イギリス・北欧型の医療制度を念頭に置いた改革が成される可能性が高いと思っております。


次に、海外の医療制度と比較した際、現在の日本の医療制度が持つ強みというのは、主に下記の3点が挙げられると思っております。

①自己負担額の低さ
②アクセスの良さ
③医療の品質

そして、イギリス・北欧型の医療制度が持つ最大の特徴としては、2番目の"アクセスの良さ"が、完全に失われてしまうという事が挙げられます。


具体的に、どういう事かと申しますと、イギリス・北欧型の医療というのは、全ての国民が無料で医療サービスを受ける事が出来る一方で、全ての費用が税金から捻出されており、日本のように、社会保険料という概念が存在しないため、医療サービスの提供にかかる原資というのが、比較的、小規模であると見做す事が出来ます。

ですから、財源が乏しい分、窓口も絞らざる負えず、町医者の診療を受けるのに、数日待たねばならない、あるいは、専門医に診察を受けたり、手術を受ける場合等は、数ヶ月~1年先まで待たねばならないという実情があります。

また、救急車を呼んでも、数時間来ないという事もザラに起こっているという事です。

なので、イギリスや北欧の国民には、実質的に、私営の病院に行く以外に、選択肢が用意されていないと見做す事が出来ます。

そして、こういった問題は、"ウェイティング・リスト"と呼ばれるような、イギリスの社会問題となっている訳です。


ただ、日本においては、イギリス・北欧型への医療制度の転換が成された場合においても、社会保険料という原資も存在する事ですから、イギリスや北欧程には、アクセスの良さが失われる事は無いのではないかと思っております。


3.私案

本章においては、私が過去に投稿した、"全ての医療従事者を公務員にしてしまえば良いのではないか?"という記事を基に、私なりの、イギリス・北欧型への医療制度の転換した場合の改革案を述べさせていただきます。


まず、国の指揮・命令・監督に従う事を承諾した医療機関は、準公営の医療機関とし、これまで通り、保険適用を行い、3割~5割の自己負担額で受診出来るものとします。

つまり、該当する医療従事者を、準公務員として雇うという形になります。

逆に、国の指揮・命令・監督に服する事を良しとしない医療機関は、私営病院であると見做し、8割程~全額の自己負担額で受診出来るものとします。


そして、何故上記のような案になったのかと言いますと、一般的に、医療費の高騰というのは、医療の技術革新が主要因で起こっていると考えられておりますので、CTやMRI等の最新鋭の設備を、競争原理に基づいて、様々な病院が配置してしまうより、国が統制して、効率的な配置を行った方が、よりコストを節約出来ると考えているからです。

また、今の日本においては、小さい診療所が山程ある一方で、大きい病院が少ない傾向があるそうですので、各診療所や病院を統合し、全国的に効率的な配置を行う事も、コストの削減に繋がり得ると考えております。


そして、何より、上記のような制度にすれば、医療従事者達と国の間で、駆け引きが行えるため、両者の丁度良い妥協点が生まれるのではないかと思っております。

具体的には、各医療機関が、行政の対応や判断に納得がいかない場合は、前者のような公的医療機関の枠組みから離脱し、私営に移行するという対応を行えます。

今現在においては、マイナンバー保険証の問題によって、国と医療機関が揉めている訳ですが、そういった事を鑑みても、今後、各医療機関を準公務員とするような改革が成された後においても、国が、一方的に、医療従事者の権利を侵害するような行動に出る事は、十分に考え得る訳です。

ですから、そういった事を防ぐためにも、行政が、医療機関や医療従事者達に、横暴な態度を取った場合、全ての医療機関が、公的医療機関の枠組みから離脱するというような、言わば、ストライキの実施の余地が担保されたような制度である必要もあるとも思っております。


まとめ.

やはり、現在の医療制度においては、国民が、医療機関を受診する程、各医療機関が得られる収入が上がるという構造があると言える訳です。

ですから、本記事で掲げたような改革が行わない限りは、各医療機関は、高齢者等を、積極的に通院または入院させねばならない構造が解消されない訳ですので、実質的に、医療費の削減は不可能であると考えられます。

また、現状において、8割の病院が赤字経営であるとされておりますので、早期に、何らかしらの対策を打たねば、地方から、診療所や病院が次々に消えていくという現象が起こってしまうという懸念もございます。


ただ、医療費を削減すると言っても、現状の医療の質をある程度担保する必要がある以上、現実問題として、どんな改革を行ったとしても、医療従事者達の所得を保障する必要がある以上、そこまで税や社会保険料の負担軽減は望めないでしょう。

ですが、改革を行う事によって、高齢者の年金を増やしたり、現役世代に減税を行ったりする事は、一定程度可能になるのではないかと考えております。


最後になりますが、私が、今持っている最大の懸念点は、"果たして、今の医療保障制度を維持し続けた場合でも、日本をデフレ経済から真のインフレ経済へと転換する事が出来るのか?"という事が挙げられます。

経済成長している海外諸国と日本を比較した場合、大きく異なるのは、医療制度ですので、医療制度こそが、デフレを招く一因になってしまっているのではないかと疑っているという事です。


仮に、現行のような医療制度が継続した場合においても、しっかりとインフレが起こるような経済を作れるのであれば、全く問題無いとは思っております。

ただ、今の医療制度自体が、デフレの原因となっている場合は、医療費を減らし、インフレを起こすための財政出動のための予算に転換する等、何らかしらの対策を講じない限り、過去30年間続いているデフレが更に継続してしまうと考えられ、そうなってしまった場合は、不況によって、実質賃金が下がり続ける等の悪影響が出てしまったり、国債費の膨張により、国民の税負担が、更に重くなり続けるという事が考えられます。

ですから、今後、どんな改革が行われるにせよ、デフレ経済からの脱却という観点も重要視した上で、改革を行う必要があると思っております。


参考文献.

・日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一 (講談社+α新書)

・NHS is Not Working (English Edition)

・The NHS Crisis: The Struggles, Reforms, and Future of Britain's Health Service (TrendLens Collection) (English Edition)


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