隠岐への旅①国賀海岸編
子どもたちの成長や新型コロナの影響で、長らく旅行らしい旅行に行けていませんでした。
久しぶりの旅の行き先は、島根県の隠岐諸島。行き先が隠岐になったのは、GWに長男と彼女が訪問して「良かった」とお勧めされたのがきっかけです。
恥ずかしながら、今まで隠岐については「島流しの地だったよね?」的なイメージしかなく、詳しいことは知りませんでした。
旅行するにあたって、隠岐の歴史や観光スポットをネットで調べたり、隠岐出身の知人に聞いたりしました。とりあえず、外せないのが国賀海岸というのは皆一致。
ということで、今回の旅のミッションは以下の2つとなりました。
①絶景と言われる国賀海岸(摩天崖)に行くこと。
②長男イチオシのホテル「Entô(エントウ)」に宿泊すること。
今回はミッション①について書きます。
ユネスコ世界ジオパークに認定されている国賀海岸
隠岐は「隠岐諸島」とも呼ばれるように、180もの島々で形成されています。その中で人が住んでいる島は4つ。最も大きな島が【島後(どうご
と読みます)】で、それ以外の西ノ島、中之島、知夫里島という3つの島は【島前(どうぜん)】と呼ばれています。今回訪れた国賀海岸は、島前の島の一つ、「西ノ島」にあります。
国賀海岸は海岸という名前ですが、いわゆる私達がイメージする海岸(砂浜や岩場)とは少し違います。国賀海岸は、いわば切り立った「崖」なのです。中でも「摩天崖」と呼ばれる最も高い崖が有名で、国賀海岸一体は絶景スポットとして知られています。
そもそも、隠岐諸島が本州と少し違った風景になっているのは、島の成り立ちが関係しています。
ユーラシア大陸の一部がプレート移動で引き離され、そこに日本海ができる→そこに大規模な火山噴火が発生
→さらに海抜が上昇して、日本本土から分離して現在の隠岐諸島になる
という流れですが、プレート移動が始まったのが2億5000万年前、「日本海ができた」あたりでおおよそ2600万年前。現在の島のように分離したのも40万年前というように、恐ろしく長い年月をかけて今の姿になっています。
結果、海岸は崖の場所が多く、その崖も火山の噴火によって地球の奥底から湧き上がってきたさまざまな地質から成り立っています。溶岩が固まってできた珍しい形の岩や、色とりどりの地層がむき出しになっている様は自然が作り出した芸術品。それらの造形がダイナミックかつ美しいため、隠岐はユネスコ世界ジオパークとして認定されています。
隠岐は大阪空港(伊丹)から直行便で45分という近さ。行きは出発時間が遅れ、実際の飛行時間はなんと35分で隠岐ジオパーク空港に到着しました(早すぎて機内サービスのドリンクも出てこなかった)。空港は大変コンパクトで、出たところに本物の隠岐牛がお出迎えしてくれました。
レンタカーが空港駐車場まで来てくれていたので、そのまま案内の人と車へ。外に出た途端、刺すような日差しが痛い。思わず係員の人に「隠岐も毎年これくらい暑いんですか?」と尋ねてみました。「隠岐はめったに35度を超えませんが、今年は連日35度超えています」とのこと。自然が豊かだし、大阪よりは涼しいかなという淡い期待は早くも崩れ去りました。
その日は夕方まで空港のある隠岐最大の島【島後(どうご)】を観光して、夕方の高速船で宿泊先である【島前(どうぜん)】の一つの島「中の島」へ移動。明日の国賀海岸訪問に備えて、宿でゆっくり過ごします。宿泊先の「Entô(エントウ)」(今回のミッション②)については、以下の記事で。
炎天下、摩天崖から国賀海岸遊歩道を歩く
二日目も眩しいくらいの雲ひとつない晴天。宿のある中ノ島から国賀海岸のある西ノ島へは渡し船で移動します。こじんまりした船で15分くらい。島々を行き来する船は一日数本。時刻表をちゃんと調べておいて、どの便で移動するかスケジュールを予め決めておく必要があります。
西ノ島に到着後、早速レンタカーで国賀海岸へ。とりあえず一番てっぺんにある摩天崖を目指します。軽自動車がやっと通れるくらいの狭い道をぐんぐん登っていくと、道端に馬たちがいました(野生の馬らしい)。駐車場に車を止め、坂を登って行くと一気に見晴らしのいい摩天崖に出ます。本当はこのあたりにも馬や牛が放牧されているのですが、この日は暑すぎて一頭も見当たらず。トイレの庇(ひさし)のところに、牛が二頭日陰で避難していました。
見渡す限りの海。入り組んだ地形とそれを縁取る崖。雲一つない天気のせいでどれも彩度が高く、まるで外国にいるかのような景色でした。
摩天崖のてっぺんから崖の下にある国賀海岸までは、「国賀海岸遊歩道」という高低差の激しい遊歩道が作られています。口コミではこの遊歩道が素晴らしいと皆が口を揃えていたので、暑い中降りてみることに。
この日の気温は35度超え。日差しは容赦なく降り注ぎます。日焼け止め、帽子、日傘と対策はしていたものの、暑くて溶けそう。ここまで来たら降りるしかないと腹をくくったのですが、そこで一つ問題が。レンタカーは摩天崖のてっぺんにある駐車場に置いてあります。つまり、遊歩道を一番下まで降りたら、また車のところまで戻らなくてはならないのです。遊歩道は想像以上に急な坂道でした。少し降りただけで吹き出す汗。途中来た道を振り返ってみると、壁のようにそびえ立つ坂が。「この暑さの中、下まで降りたら絶対戻れないな」と確信しました。
選択肢は二つ。一つは下まで降りずに帰り道(上り坂)の体力を残して、途中で引き返す。もう一つは、誰か一人が途中で引き返して車に戻り、一番下にある国賀海岸に迎えに行く・・・。
ということで、犠牲となってくれた夫が途中で坂道を引き返して、レンタカーで国賀海岸まで迎えに来てくれることになりました。
夫に迎えを任せた私と次男は、国賀海岸のある一番下まで歩きます。海、空、崖、緑。自然以外何にも人工物のない、壮大かつ美しい空間。ちなみに夏休みの日曜でしたが、暑すぎてこの素晴らしい遊歩道を歩いていたのは私達以外に一組だけ。この場所をほとんど貸し切りという贅沢な時間を満喫しました。
午後からは海の上から摩天崖~国賀海岸を堪能!
お昼は地元の食堂で刺身定食(サザエのお刺し身でした、美味。)を食べました。暑さでやられた身体を休めて、国賀めぐり観光船乗り場へ移動。午後からは国賀海岸を船で海上から楽しみます。
観光船は一見漁船にも見えるコンパクトな船で、屋根とクーラー(ほとんど効いてなかったけど)が付いていて快適。小回りが利く船は、入り組んだ崖の隙間を縫うように進んでくれます。流れ行く景色に合わせて船長さんが島の成り立ちや見どころをガイドしてくれますが、エンジン音がうるさくて、ところどころしか聞こえなくて残念。観光ルートは一応決まっているようですが、その日の天候や波の状態に合わせて船長さんがルートを決めているそう。
海の青さと、地層の黒や赤、灰色、オレンジのコントラストがなんとも美しい。船が国賀海岸をぐるっと回り込むと、午前中に歩いてきた遊歩道のあたりに出ました。ひときわ高くそびえ立つ摩天崖。同じ場所でも角度を変えると、がらっと違う風景になります。
途中、何度か海岸の近くで船を止めてもらえたので、ゆっくりと崖や地層を観察できました。この地で幾度となく噴火が繰り返されてきたのだろうなと、長い年月に思いを馳せます。本州ではなかなか見られない不思議な景色に、飽きることなく1時間半のツアーを楽しめました。
自然が作り出した芸術品を、午前中は歩いて体感、午後からは海の上からじっくり観察するという贅沢。その景色はいわゆる私達が知っている日本の風景とはまた違う景色でした。プレート移動や大噴火という、とてつもなく大きな規模の地球の営みは、知識として学んでいてもなかなか実感することはありません。生き生きと眼の前に広がる景色に、「地球もまた、私達と同じように生きているんだな」と心揺さぶられる時間となりました。
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