見出し画像

【患者のための漢方薬入門③】漢方薬を病院で処方してもらう場合&まとめ

漢方薬を薬局やドラッグストアで購入する方法について紹介しましたが、最近では、漢方薬を病院で処方してもらうという機会も多いですよね。病院で漢方薬を処方してもらうメリット・デメリットや注意したい「保険診療と自由診療の違い」などについて、紹介します。


病院で処方してもらうメリット・デメリット

私が漢方薬を利用し始めた20数年前には、病院で(いわゆる保険診療で)漢方薬を処方しているところはごく僅かでした。

ここ数十年の間に、漢方薬の保険適応が増え、漢方薬が薬として広く認知されるようになりました。また、漢方薬の研究が進み積極的に治療に漢方を取り入れる医師も増えています。その結果、漢方薬を処方する病院が増えています。

特に「漢方薬を」とお願いしなくても、西洋薬に混じって漢方薬が処方されることも一般的となりました。

病院で処方してもらうメリットはなんと言っても、医師に漢方薬を選んでもらうことが出来ることです。「漢方薬は選ぶのが難しい」と書きましたが、医師の目から漢方を選んでもらえることは大きな安心感があります。

また、医師の指示、監督のもと服用するので、たとえば、効き目が無かったときや、副作用が起こったときなど、速やかに医師に相談することができます。

ただし、病院で処方してもらう場合には、デメリットもあります。

そもそも、漢方薬を治療に使うか使わないかは医師の判断です。医師の中でも漢方薬を積極的に使う医師とそうでない医師がいるのが現状です。漢方薬を積極的に利用していない医師でなければ、患者が漢方薬を希望しても処方してもらえない場合が多いでしょう。(薬の処方は医師の診断に基づくので当然ですが)

もう一つのデメリットが、医師によって漢方薬に詳しいかどうかの差が激しいということ。

もちろん、医師は漢方についても学んでいますが、必ずしも専門的であるかというと、そこには疑問があるのが正直なところです。

私の経験上、漢方専門医の医師でなければ、いわゆる「証」や「気・血・水」などの診断をする方はほとんどいません。

とはいえ、漢方専門医でない医師が処方する漢方薬がデタラメというわけでもないのです。

実際、漢方薬のエビデンス(実際に患者さんに使用して得られた効果効能)については、最近各地で研究が進んでいて、多くの学会などで、新しい情報が発信されています。
多くの医師は、少なくとも自分の専門に関しては、エビデンスのある漢方薬の使い方について、新しい情報を持っています。

いわゆる正統派の漢方の診断とは異なっても、実際に使用した患者さんの症状とその結果に基づいて処方されるというのは、患者としては、とても信頼できる使い方だと言えます。

しかし、漢方専門医の先生などの中には、「証」や、「気・血・水」などを見る漢方の診断をしていない処方については、「正統派の漢方処方ではない」とおっしゃる方もいます。

あえて、患者の立場から言わせてもらうと、臨床の場で実際に使われたエビデンスがある薬を処方してもらえることは十分メリットがあると考えます。それに、保険適用で漢方を出してもらえることは、患者としては経済的にもとても助かります。

それでも漢方薬は、ちゃんと漢方の本来の診断で処方してほしい、と思うのなら東洋医学専門医である医師のいる病院を探すという方法が一番安心でしょう。

【注意!】漢方専門の病院には保険診療と自由診療がある

患者としての立場から、漢方専門の病院を探す際に注意したいのが漢方専門医を掲げている病院には大きく分けて「保険診療」と「自由診療」の2つがあるという点です。

保険診療とは、いわゆる普通のクリニックと同じで、保険証を持っていけばば、保険が利いて3割負担などで済む病院です。

一方漢方専門を謳っている病院の中には「自由診療」の病院も多くあります。こちらの場合、保険は利かないので、いわゆる全額自費になります。

この2つの違いが、患者にとっては実はとても大きくて、私も「どっちがいいの?」と聞かれることが多々あります。

保険診療か否かで最も異なるのは、当然ながら支払う金額です。保険診療の場合は、西洋薬を処方してもらう場合とほぼ同じと考えて良いでしょう。

一方、自由診療となると全額自己負担。金額が大幅に異なります。私がいくつか行った病院の平均の金額を見ると、薬代として大体一日数百円(400円から600円くらい)かかる場合が多いようです(他に初診料や診察料などもかかります)。漢方薬の場合、長期に渡って服用する場合もあるので、一月に換算すると、数万円は出費をみておかなければなりません。

これはとても負担が大きいので、よほどお金に余裕がなければ自由診療の漢方漢方医のところへ通い続けることは難しいでしょう。

ただし、自由診療ならではのメリットもあります。漢方薬は保険診療で処方する場合は、症状に応じて保険適用が認められた漢方薬しか使うことができません。そして、保険適用については、漢方薬の配合量も詳しく定められているので、規定の配合量しか処方することができません。

漢方専門医の先生に言わせると「保険で出せる漢方薬だと効果が現れるのに量が足りない」場合が多々あるとのこと。そのため、実際に自由診療では保険診療で出される漢方薬よりも、成分の配合量が多い薬を出すことも可能です。

もちろん、薬は多ければ多いほどよいというわけではありません。実際、保険診療でもらっていた薬を自由診療の病院で、配合量の多い処方をしてもらったら劇的に効いた、ということは少なくないのです。

私の経験としても、自由診療でもらう薬、とくに煎じて飲むタイプの薬はやはり効き目がはっきりと実感できる場合が多いです。

漢方は効き目が穏やかで長期間飲まなければならないというイメージを持っている方も多いかもしれません。実際には、即効性のある漢方薬もたくさんあります。保険診療の漢方薬がどうも効き目を感じられないという場合、お金に余裕があれば自由診療の病院で漢方薬をもらってみるというのも有りだと思います。

保険診療か自由診療かの区別は、大抵の場合、病院の看板などには書いていないので注意が必要です。

そのため、できれば事前にHPや電話などで、保険診療か自由診療か確認しておくと良いでしょう。

【最後に】漢方薬にまつわるQ&A

最後に漢方薬に関して、よく聞かれる質問に答えていきます。

Q1.漢方薬は即効性がない(長期間飲まないと効果がない)の?

A.漢方には即効性のある薬もたくさんあります。

一口に漢方薬といっても、本当にたくさんの種類があります。慢性的な症状を改善したり体質を改善していくタイプの漢方薬は、ある程度長期間飲まないと効果が感じられないことが多いです。一方で、葛根湯など数回服用するだけで、すぐに身体に変化を感じられる薬もたくさんあります。

Q2.漢方薬は高いの?

A.市販されている漢方ですが、例えば風邪薬を比較すると、市販薬と比べて決して高いわけではありません。例えば葛根湯30包(10日分)で1800円前後、市販風邪薬も10日分で1500円~2000円前後とほとんどかわりません。

自由診療を行っている漢方専門の医院や漢方薬局では粉薬だけでなく、煎じ薬も扱っています。煎じ薬は粉薬よりは割高で、一日分が数百円かかるので、かなり高価だと言えるでしょう。

Q.3漢方薬の効果に科学的な根拠はある?

A.漢方が効くメカニズムについては、多くの研究がなされ、少しずつ科学的な検証が行われています。また、臨床の場で漢方を使った結果が多くの学会で発表されており、さまざまな疾患において、その有用性が認められています。

患者としての漢方薬との付き合い方

漢方は幅広い疾患や症状に対応していますが、万能ではありません。

日本には高度な西洋医学が普及しています。客観的な検査や医師の診察に基づいて処方される薬は、安全性とその効果が認められています。

急性の疾患や重篤な症状については、何をおいてもまずは西洋医学での治療を優先すべきです。

市販薬で治せるレベルの風邪や花粉症などや、西洋医学での治療がなかなか功を奏しない慢性疾患、不妊や更年期障害などの婦人科系疾患、冷えや便秘症といった体質改善などが漢方の得意とするところです。

また、一方で「どれだけ検査をしても原因がわからない」「薬を飲み続けているが副作用がきつい」など西洋医学においても、まだまだ改善できない病気や症状があるのも現実です。

そんな症例に関しては漢方での治療を検討する価値があるといえるでしょう。

筆者は、心配な症状があれば普通に病院に行き、西洋医学的な診断はきっちりと受けておきます。その上で、風邪やインフルエンザ、婦人科系の病気、アレルギーなどにおいては、漢方薬を適宜利用し、劇的な治療効果を実感してきました。

西洋医学、東洋医学どちらも完全ではありません。上手く両方を利用することで、さまざまな病気に立ち向かっていくということは可能だと思います。

さまざまな疾患に対して、漢方薬という選択肢があるということを知っていることは、治療法を広げることにも繋がります。賢く漢方を利用して、日々の健康維持に役立ててくださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?