#ep4「Change the future 母」

#ep3「Change the future 母」からのつづきです。


どうしたら明日、夫に起こる事故を避けることができるのだろうか。
子供たちとあれこれ考えてみるが、映画みたいに画期的なアイディアなど一向に出てきそうもない。

もうめんどくさいことしないで、まごころでストレートに伝えたらいいのよ!一生懸命誠意を尽くせば何とかなるものよ。タイムトラベラーの規則かなにか知らないけど、人の命がかかってるんだから。事情を話せば大丈夫よ、きっと!恐るべきおばちゃん理論が飛び出してきた。

とにかくそうと決まれば、どこでそれを夫に伝えるか。
もう時間がない。今日の会社帰りだ。つまり帰宅する際に降りたバス停のところしかない。今はお昼12時。あと6時間ほど後になる。このまま待つか?

「お母さん、お腹へったよー」

健司はそう言った。康太も隣でうなずいている。確かにそうだ、昨日の夜から何も食べていないものね。

「あっ、だれか降りてくる!隠れてっ!」

健司が気がついて警告した。すごく敏感になんでも気づく子だ。私や康太はこの点は全然ダメ。ぽやーっとしてる。
物置に隠れてみていたら、また若きし頃の私たちが階段を下りてきた。3人でどこかへ行くようだ。あ、そうだ思い出した。隣の棟の団地に私の妹家族がいるから、よく一緒に出掛けていたんだっけ。きっと一緒に近くの総合スーパーのフードコートで食事でもするつもりだろう。私たちもお腹が減ったので気づかれないように後をつけて総合スーパーへ向かった。

当時の私も妹も若い。スリムだし。12年前だとあんなに違うものなのか。なんかショックだなぁ。私は自分のお腹を見ながらちょっと落ち込んだ。私たちはちょっと離れたところで席を取って、当時の私、妹、そしてその娘たち2人を見ながらラーメンを食べた。

あんなに幸せそうに過ごしてる。まるで何も悩みが無いように見える。明日起こる事故や、ましてや夫がそのまま亡くなるなんてこと夢にも思っていないだろうな。まぁ、あたりまえだよね。

少しの時間、私自身を振り返っていた。
夫を亡くしてから3年間くらいは地に足がついていない感じだったけど、それ以降は自分で美容室を開業し軌道に乗せ、2人の息子を育てた。そして今、美容室に来てくれる長年のお客さんや、ママさんバレーの活動で忙しいがとても充実した日々を送っている。今の私はなんだかんだ言っても、幸せだと感じている。

私たちは食事を終え、軽く店内を見た後バス停の近くで待機した。夫が乗って帰ってくるのは18時頃に着くバスのはず。夫がバスを降りた時を狙うのだ。あたりが暗くなってきて、私は少し緊張してきた。

つづきはまた。

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