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「仕事中ですから、勘弁してください」〜タクシー運転手の思い出〜

タイトルの言葉を言ったことがあるだろうか。実は私もちょっと迷ったんだが、でもやっぱりこの言葉を言った。そんな話である。

ススキノの夜もピークを過ぎ一息つける9時頃、私は風俗街から少し外れた路肩にタクシーを止め乗車側のドアを開けた。こうして歩いているお客さんをタクシーに誘う。当時の札幌ではお決まりのスタイルであった。それから間も無くして、

「あーっ、この子に決めたぁー!」

こんな大声がしたので慌てて顔を上げると、見るところ50歳半ばくらいだろうか割腹のいいおじさんがフロントガラス越しに私の顔を確認して叫んでいた。次の瞬間すごいスピードで車に乗ってきた。

「お願いねー」

おじさんは爽やかなダミ声を発しながら、もう一度私の顔を確認した。「あっ、はい、いらっしゃいませ」私は何かひっかかる感じを抱きながらも接客に徹した。

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