
鳥たちと窓ガラス|あぶらやま野鳥ブログ②
皆様こんにちは。日々お疲れ様です。
学校、職場、家の外
今日はどんな鳥さんに会えましたか?
つい数日前の話ですが、鳥類の人工物への衝突事故を調査研究しているという某大学の方から「いろんな所から衝突事故に遭った個体が運び込まれていないか」と問い合わせがありました。
現状、当センターでは運び込まれる事例はないとお答えしたのですが、実はそのほんの1週間ほど前に、この自然観察センターの事務所の窓で衝突事故が起きたばかりでした。
その日は、3人ほど事務所でパソコン仕事をしていたのですが、突然大きく「ドンっ!!」という音がしました。
まるで人間がダッシュで窓にぶつかったような大きな音です。
「この鈍い音は…」と思って見に行くと、シロハラという鳥が倒れていました。ぴくりとも動きません。

油山でも冬の常連さんです。
このような場合、死んでしまった!とすぐに判断するのは尚早です。脳震盪(のうしんとう)を起こして気を失っているケースも多々あります。もし気を失っているだけだったら、そのまま横にしておけば目を覚まし次第自力で飛んでいけます。
衝突したシロハラのわずかに半開きになった目からは生気は感じられなかったものの、どうか目を覚ましてと願いながら保温をし、センターのベランダ側に置いて様子を見ることにしました。
結論をいうと
このシロハラが目を覚ますことはありませんでした。
衝突音の大きさ、そしてくちばしの先が折れている事からかなりのスピードで窓にぶつかって首の骨が折れたのではないかと推測しています。
直前にシロハラとヒヨドリの声が騒がしかったようで、もしかしたらヒヨドリに追いかけまわされていたのかもしれません。
今回の事務所の窓はレアケースですが、残念ながら当センタ―のベランダ側の窓では毎年衝突事故が1,2件発生しています。
以前から衝突防止用に猛禽類のシールを張っていたのですが、去年3月に立て続けにミヤマホオジロの事故が起きたので、センターではさらに対策を取りました。

対策は窓にステッカーを張って「ここには窓があるよ!!!」と鳥たちにアピールする方法です。色とりどりだとなお良い、という情報を聞いていろんな色の自家製“鳥さんステッカー”を張りました。
結果、、、、、、かわいくなりました♡


不思議なことにこれだけ窓がある中で衝突事故が起きたのは、写真でいうと左側の窓ガラスばかりです。
近くに木があって見通しが悪いのが原因なのかもしれません。
この衝突事故、森の中だけではありません。
とある施設に行った時もガラス張りの建物の下にコゲラが倒れているのを見たことがあります。
そしてもっと身近な話をすると、我が家は福岡市南区の一般的な住宅街なのですが、うちの2階にあるこども部屋の窓ガラスにシロハラがぶつかり、当時小3だった息子から「どうすればいいっ!?」と慌てて電話がかかってきたことがありました(この個体は10分もしないうちに目を覚まし飛んで行ったそうです。よかった!)。
私たちの知らないうちに、たくさんの鳥たちが事故に遭っているというのが現実です。
お隣の国、韓国ではこんなデータがあります。
韓国で構造物に衝突して死ぬ野生鳥類は年間800万羽に上る(聯合ニュース)
大国アメリカの都市部になるとその規模はさらに膨大となります。
高層ビルに衝突して死ぬ野鳥、米で年間6億羽(CNNニュース)
かなりショッキングなデータです。
冒頭にお話しした大学の方は事故抑制などに役立てる為に“どんな鳥が”“どんな人工物に”衝突しているかといった調査をされているとのこと、悲しい現実がある一方そのような志がある方がいらっしゃるというのも事実です。
そして私たちができる対策もあります。
もし鳥たちの衝突事故が起こりそうな窓ガラスがあったら
・カーテンを閉める
・窓ガラスにステッカーを張る
それだけでも十分に効果があるようです。
自然観察センターとしても、もうこれ以上センターでの衝突事故は起こらないよう願うばかりです。
今回の野鳥ブログはこれにて。
長文にお付き合いいただきありがとうございます。
それではまた。
写真提供:
日下充さん(油山野鳥観察ボランティアヤマガラの会)
文:ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 土屋志乃
ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター
福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。
開館時間 9:00~16:30
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