ヒトクチタケ(一口茸)Cryptoporus volvatus
時期
春から夏にかけて(福岡県内では主に3月~6月に生え始め、場所によっては1年を通して(秋から冬のものは老菌)その姿を観察することができます)
発生環境
枯れて間もないマツ(主にクロマツ・アカマツ)に発生します。マツが枯れると一番はやく発生するきのことしても知られています。
特徴
幼菌の時は、丸い形をしていて弾力があり、全体的にニスを塗っているかのような光沢が見られます。成長すると下面の薄皮が破れていき、白くてなめらかな質感へと変化します。きのこは成熟すると、下面の根本付近に穴が一つ空きます。穴からは強烈な魚の干物臭(もしくは柑橘臭(かんきつしゅう)、アンモニアによく似た臭いと例えられることもあります)が漂ってきます。
ちなみに、和名の「ヒトクチタケ」は一口サイズで食べれるという意味ではなく、成熟すると下面に穴が一口開くことから名づけられています。
傘表面の褐色皮は子実体が大きくなるとひび割れはじめ指で触れると手に付着します。
空洞の天井にあたる部分は、管孔(かんこう)があり、よく見ると小さな穴がいくつも空いています。この管孔の断面はチューブ状の器官の集まりです。この部分に胞子が作られ、空洞部分から胞子を放出します。
また、このきのこは自然に胞子を飛ばすほかに、様々な生き物たちに胞子散布を手伝ってもらっています。その中の代表的な生き物が「昆虫」なのです。
文・写真:ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 岩間杏美
【参考】
日本のきのこ(山と渓谷社)
ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター
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開館時間 9:00~16:30
休館日 毎週水曜日(祝日の場合翌平日)