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カンゾウタケ(肝臓茸)Fistulina hepatica


はじめに:このページをご覧のみなさま
今回のブログでは、きのこの管孔(穴が沢山集合しているような写真)をいくつか掲載しています。この記事をご覧になる前に、「集合体」が苦手な方はお控えになられた方がいいかもしれません…。
そのまま、ご覧になる方はこのままお進みくださいませ。
きのこちゃんより

時期

梅雨期と秋(福岡県では4月下旬から6月上旬、10月頃の2季節で観察することができます。)

発生環境

比較的大きなスダジイ・コジイなどのブナ科の根本や幹の隙間、うろの隙間などから生えてくる根際心材褐色腐朽菌です。

巨大なスダジイの根元に生えていたカンゾウタケ

特徴

【傘】
子実体は扇形、半円型、腎臓型で濃い紅色~ワイン色。傘は根元から一つ出ていますが、発生場所によっては重なり合って生えている姿を見かけることもあります。未熟な子実体はピンク色で遠くからでも良く目立ちますが、成熟するとだんだんと色あせていき、最終的には黒褐色へと変化していきます。その見た目から、米国では「Beefsteak Fungus(ビーフステーキのきのこ)」、フランスでは「Langue de boeufまたはOx Tongue(牛の舌)」とも呼ばれています。

幼菌時はピンク色。遠くからでもよく目立ちます。
定点観察①(2021年4月30日):傘表面の色はピンク色です
定点観察②(2021年5月9日):成菌になると表面の色は褪せていきます。
定点観察③(2021年5月20日):老菌は褐色で全体的にぬめりがあり、崩れやすくなっています
カンゾウタケの表面。よく観察してみると裏面(管孔)と同じような構造になっていますが、表面のものは次第にゼラチン質へと変化していきます。

【管孔(かんこう)】
未成熟な子実体は、裏も表も共通の表皮構造を持っているので、傘と管孔との境目ははっきりとはしていません。成長すると下面のみが管孔へと変化していきます。下面は無数のパイプが敷き詰められているような構造になっていて、大きさの違う管孔がまばらについています。

成熟したカンゾウタケを横から見てみると、一つ一つが独立しているように見えます。
管孔の断面。一見つながっているように見えますが一つ一つは離れやすく、指で触ると簡単に分かれます。

【断面】
カンゾウタケの子実体の断面は、本当に霜降り肉にそっくりな色合いをしています。また、本種は赤い色素が水分と一緒に流れ出るため「血」のようにも見えてしまいます。

カンゾウタケ断面。霜降り上の模様がとてもきれいでした。


【参考書・文献】
山渓カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ(山と渓谷)
しっかり見わけ観察を楽しむ きのこ図鑑(ナツメ社)
世界きのこ大図鑑:原色・原寸(東洋書林)
北陸のきのこ図鑑(橋本確文堂)

注)きのこ豆知識は毎月2回更新をします。(第1、第2金曜日に更新を予定していますが、臨時休載、更新の変更などもあるかもしれないので、その際はご了承ください)


ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

季節で変わる企画展示も随時行っています

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