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森の中で正月飾りを探してしてみた|あぶらやま植物ブログ⑫
みなさん、こんにちは。
気づけば年末もカウントダウン。
お正月の気配が日に日に近づいてきました。
お正月と言えばしめ縄や門松。これらお正月飾りは今でこそホームセンターでひと通り揃うものですが、ちょっと前までは自分たちで調達するものでした。
ここ油山は手つかずの森というよりは、昔から人々が分け入り薪を調達し、炭づくりを行い、生活に利用されてきたいわゆる「里山」です。きっと油山のような場所ならお正月飾りも揃うのでは!
ということで今回は油山で正月飾りを探してみることにしました。
まずはお正月にゆかりがある植物をおさらいしてみます!
なんとなく飾っていたりしますが、素材は全て縁起が良いとされている植物を使っています。
■しめ縄
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■門松
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それでは、さっそくこれらの素材が調達できるのか、実際に油山で探してみたいと思います!
せっかくなので「すべて見つけるのにどれくらいの時間がかかるのか」も検証することにしました!
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実はセンター前に立派なアカマツがあるのですが、今回は自分で採取したとしたらどれくらいかかるか…の検証なので、手が届かないところにあるものはスルーしました。同じくナンテンも見える場所にあるけど手が届かないのでスルー。
それでは次っ!!!そのままふくろう谷へ!
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ユズリハを正月飾りに使う由来:新しい葉が伸びた後、古い葉が黄色くなり落葉する様子が次の世代へ「譲る」ことを連想させるため、「親から子への世代交代」の祈願が込められています。
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ここまででまだ1分ちょっと!早い!
ナンテンという名は「難を転じる」ことから縁起が良いとされています。
災い転じて福となす!!
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マツを正月飾りに使う由来:松は、常に青々とした葉を保つことから中国や日本では古来から縁起の良い植物とされ、盆栽やいけばなで重宝されてきました。「神を待つ(まつ)」「神を祀る(まつる)」という謂れからも、神仏の宿る木として崇められたり、神仏への奉納にも用いられる樹木です。
2分ちょっとで4種見つけられるという想定外の好記録に俄然やる気が出てきました!残るはダイダイ、梅、竹です。
タイマー片手にスタッフ小走りで移動!夫婦岩展望台から林道を降り「チョウの楽園」へ。
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ダイダイを正月飾りに使う由来:1度実ると何年も木から落ちずにいるため、1つの木に何代ものダイダイが実っていることがあります。このことから、ダイダイは「一族の代々繁栄」を意味します。
そして梅っ!そうだ!うちには梅園があるっ!
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梅は、春に最も早く開花する花木のひとつ。寒い季節に花をつけることから、強く縁起の良い花とされました。天神様の花木としても有名です。
ここまでで11分34秒!今回は運動不足気味のスタッフが小走り(後半はほぼ歩き)で挑戦しました。それでもこのタイム!!こんなに短時間で見つかるとはっ!!
最後は門松用の竹なのですが、立派な孟宗竹は無料駐車場の裏にしかありません。そこまでは徒歩だと20分ほどかかります。なので今回は断念しました。昔の人たちならば、諸々をゲットして下山がてら竹をゲットしていたのではないでしょうか。
最後に
今回お正月飾りを森の中で探してみて、そのほぼすべてが「割とすぐ手に入るもの」だということがよく分かりました。
正月飾りを自前でこしらえるのが当たり前だった頃、自分たちの生活にとても身近だった植物たちの中から、その名前や形態そして生態から縁起が良さそうなものを選び、お正月という一大行事で飾るようになったのでしょう。
でもそれは、昔の人たちがこれらの植物の特性をじっくり見ていて、知っていたからこそ生まれた風習なのだろうと思います。
現代の私たちの暮らしは昔ほど森や林は身近ではありませんが、それでも身近に植物はたくさんあります。
日々じっくり観察している方もいれば、なんとなく日々の景色の背景と化してしまってちゃんと見てない!という方もいるかもしれません。
例えば、いつどんな風に葉をつけるのか、葉っぱの裏は何色なのだろうか。そして花はいつ頃咲くのだろうか。花が咲いた後はどうなっているのだろうか。そういえば見てるようで見ていない、かもしれない庭の木たちを今度ゆっくり眺めてみようと思ったスタッフなのでした。
皆さんもぜひ。
参考・引用:
日比谷花壇さんHPコラム「正月飾りの花の意味は?お正月に飾りたい縁起の良い花」
文・写真:土屋志乃(ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター)
ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター
福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。
開館時間 9:00~16:30
休館日 毎週水曜日(祝日の場合翌平日)
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