ハーモニカ
リトル・ウォルター。
本名マリオン・ウォルター・ジェイコブズ。
ハーモニカを主役に、自らの歌声も武器にして一時代を駆け抜けたブルース・シンガー。
ローリング・ストーンズがカヴァー曲を披露している事でも有名か。
感情の明るい部分とブルーなフィーリングを携えた演奏は、リトル・ウォルターの光と影を投影している生き様をプレイしている熱さも感じる。
過去記事です。
1930年ルイジアナ州で生まれ、8歳からハーモニカを吹き始め12歳で家を出て南部を放浪する。
ハーモニカの腕を磨いた後に、1946年か47年にシカゴに移住をし、マックスウェル街マーケットで演奏するようになったそうだ。
その場所は荒れ果てた土地であり、露天商の並んだ青空マーケットのみならず、ストリート・ミュージシャンが集まり近くの家からアンプの電源を借りて演奏をする場所でもあった。
ハーモニカを吹くリトル・ウォルターをマディ・ウォーターズが励まし、後々に一緒に演奏をするようになった原点の場所ともいえようか。
1951年、リトル・ウォルターが初めてアンプリファイド・ハーブという手法を用いて録音に望んだ年でもあった。
ハーブと共にヴォーカル・マイクを手で包み込み、ギター・アンプでその音を電子の力を借りて増幅させるという手法だ。
奇しくもマディ・ウォーターズの録音セッションでの事だった。
エレキ・バンドが隆盛を誇ろうとした50年代にこの技法を伴ったリトル・ウォルターのハーモニカ音は見事にマッチし、主役の座を射止めようとしていた。
洒脱で都会的であり、モダンな音色は主役を張るには充分すぎるほどの存在感だ。
人の明るさや寂しさを表現し、快活にさせながらも一抹の孤独を感じさせる響きはその人そのものを表しているのかもしれない。
リトル・ウォルターのハーモニカ&歌声には何となくだがそんな魅力があるような気がする。
1952年にマディのバンドをバックに吹き込んだインスト・ナンバー「ジューク」がビルボードのR&Bチャートで一位を取る。
これは実はマディ・ウォーターズも成しえなかった事だそうだ。
それを機に、徐々にソロ・ワークも活発にしていきヒットを連発する。
52~55年にかけてチャートの常連となりその名を轟かした。
そして1957年に「ベスト・オブ・リトル・ウォルター」をリリースする。
アルバムには当時のヒット曲やインスト・ナンバーも含まれており、リトル・ウォルター初期のサウンドが聴ける。
歌声は若さを含めながらも、ブルースのニュアンスをたっぷりと匂わせた節回しもあり聴いていて心地良さを感じてしまう。
インスト・ナンバーでは2曲目の「サッド・アワーズ」など抑揚をつけ、伸びるようなブルー・トーンを帯びたハーモニカの音色はグラマラスであり引き寄せられるものがある。
11曲目のインスト・ナンバー「ブルー・ライト」もスローに展開しながらも途中でエコーがかったりして、ハーモニカをブルーで獰猛な生き物にして聴く者の心に訴えかけてくるものがある。
曲の途中でハウリングが少し入ったりしているのも、それさえ味に感じてしまう。
悪童で知られ、喧嘩好きでクラブで気に入らないお客がいたら裏に呼び出し乱闘をしていたとか、してないとか…。
お酒好きで暴れん坊の一面を持ち合わせながらも音楽を聴いていると、リトル・ウォルターの繊細な一面を見ているような気にもなる。
5曲目の「ブルース・ウィズ・ア・フィーリング」。
シンバルの音色が醸す4ビートのドラムに、ギターのバッキングがブルース独特の調子を生み、キーが高めのハーモニカがブルースを形作っていく。
途中揺れるようにしながらハーモニカの音色を響かす箇所では、まさしく人の「ブルー」な部分を鷲掴みされてしまいそうだ。
何より、この曲のリトル・ウォルターの歌声がアルバムの中で一番だと思っている。
力を入れつつも上手くブルースのニュアンスを表現し、曲に込められたブルーな部分を熱演している気がしてならない。
彼女に去られてブルーな気分になっている男の歌であると思われるが、憂鬱ややり切れなさを見事に歌い上げている。
そしてこの曲は個人的に寒いこの時期にピッタリなんじゃないかとも思う。
ブルーなニュアンスってそういう時期に合ってますよね。
演奏されてたシカゴも調べてみると、年がら年中ではないが平均気温が低い土地だ。
関係ないけど土地の、ワイン風に言うとテロワール(土地の自然環境)も音楽を醸成していく上で重要なのかもしれませんね。
シカゴで熟成されたブルースはその土地の「テロワール」も味わいの一つに当たる…。
まあ、見当違いの曲とは全く関係ない私見ですが💦
何よりもハーモニカを大事そうに包むようにして持ち、そこから発せられる音色は寒い時でも飛び切りの生きた心地を与えてくれるような気がする。
やはりリトル・ウォルターのサウンドは聴いていて最高だ。
そしてその音楽人生を全力で突っ走ってきた熱さを孕んでいる。
まだまだ寒い今時分(そうじゃなくても)愛聴したい好きなシンガーだ。
記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!
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