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ファルセット
ファルセット…
高い音域の声を出す技法の一つであり、ひと昔前のマライア・キャリーの声を聴いているとその超が付くほどの高音域の響きは凄いよな~って、昔思ってたっけ。
自分みたいな人間がファルセットしようとカラオケで意気込んでやってみても、単なる声が裏返ってしまっているだけになって微妙な感じになってしまうのだが( ;∀;)。
上手い人のファルセットって何か感情をそこに本当に持っていかれて、エモーショナル…エモい気分になってしまう。
うん?
あぁ、エモいって言葉使いたかっただけです…。
そのファルセットに果たしてどんな感情を込めているのか、喜びの感情か、悲しみの感情か、やりきれない思いなのか、はたまたどうなのやら…。
それは歌の内容次第ということなのかな。
今日も好きなブルース・マンの話を…。
フレディ・キング
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B .B.キングとアルバートキングで三大キングと称されるブルース・マン。
1934年生まれで、世代的にバディ・ガイやマジック・サムらと同じでシカゴのシーンでしのぎを削っていたそう。
亡くなったのは1976年で享年42歳。
早すぎる…!!
ダラス出身で、1949年にシカゴに移住。
そこから徐々に頭角を表し、ブルース・シーンに食い込んでいく。
1956年にデビュー。
1960年にキングレコード傘下のフェデラルと契約し、その年に「Have you ever loved a woman b/w You got to love her with a feering」でデビューを飾る。
親指と人差し指に金属製ピックをつけ、顔面は汗でいっぱいになりエモーショナルに歌い、そしてB.B.キングやバディ・ガイのようにギターのフレーズを叩き込んでいる姿が印象的だ。
さらにチョーキングを用いて音を絞り出すスクイーズという技法を使うことでも有名だ。
演奏をしている姿を見ていると本当に情熱の塊なんだろうなと思えるようなプレイをされているんです。
ソウルフルに…。
さらに後から発表された作品などを聴いていると、ファンクやR&Bの影響も受けているのかなと思えるようなファンキーなプレイもしているのが印象的。
そんな情熱の塊のようなフレディのエモーショナルなファルセットが炸裂する好きな歌がある。
初期の作品で「Have you ever loved a woman」だ。
スローテンポなブルースで、合間に挟まるフレディの「イェ~ス!!」のエモいファルセットが何とも印象的だ。
バックに聴こえるベースもドラムもピアノもゆったりとしたテンポで、大人な落ち着きというか、余計にフレディの声が際立つ。
途中のギターソロも感情に訴えかけるように聴こえ、スクイーズされたギターの音色が小気味よく音を立てる。
フレディの名演なんでしょうね。
そしてこの歌にフレディはどういう思いを込めてファルセットし、熱を帯びているのか…。
題名に「LOVE」とあるので、まあ愛について歌っているんだろうが…。
「Have you ever loved a woman」
訳すと「女性を愛した事あるかい?」
だそうだ。
正直これだけではイマイチ、ピンとこないが…。
続きの歌詞で痛みに震える程に…ときている。
成程、その男にとって忘れることが出来ないほどに情熱的な愛を胸に抱いて、その女性を愛したということか。
それは忘れる事もできない感情で、そのエモーショナルをファルセットに乗せて歌いあげているのか…。
ただ…
その愛の感情を抱いた女性と言うのがどうやら親友の彼女らしく、理性と愛の感情の狭間で揺れ動く男の心情をこれでもかとエモーショナルにギターを弾き、歌い上げているのである。
っという事はあの「イエ~ス!!」のエモいファルセットは一体どういう感情が籠っているんだろうか!?
そんな事を考えながらこの歌を聴いていると、そのやり切れない思いと、愛情と友情、本能と理性の狭間で苦悶する一人の男の葛藤が、黄昏時に似合いそうな曲調に妙にシンクロしている気がした。
そしてフレディの情熱的なファルセットはやり切れない思いを、エモーショナルに発散するがための手段なのだろうか。
曲を聴いていると後半になればなるほど、そのファルセットの熱は帯びている気がする。
どうしようもない苦悩を空間に昇華させるかのようなファルセットと、一人の男の悲哀をギターソロに描き、まさに名演とも言えるプレイを聴かせてくれていると思う。
この複雑な男の感情、まさしくブルースなのだと感じる。
色々とありますよね、このブルーなフィーリングって。
そして我慢しているその男の背中の様子…
何だか昭和を感じるのは俺だけか?(笑)
本当にじっくりと聴きたくなる良い曲です。
ちなみに…
この「Have you ever loved a woman」はある大物ミュージシャンがカヴァーしていることでも知られる。
E.C…
そう、エリック・クラプトン御大である。
歌っている様子は去年発売された「Nothing but the blues」にも収録されている。
こちらのバージョンでもクラプトンは、クラプトン流に情熱的に歌いあげている。
ちなみに記憶が確かならば、「Have you ever loved a woman」が初めて収録されている作品は、1970年発表のデレク・アンド・ドミノス名義の名作アルバムでタイトルが…
「LAYLA」(邦題:いとしのレイラ)だ。
あの名曲いとしのレイラが入っているアルバムです。
ここで一つ気になるのが、レイラは親友であり盟友のジョージ・ハリスンの妻パティ・ボイドに捧げた曲であると言われる。
いわば許されない愛の歌という事か。
後年クラプトンとボイドは1979年に結婚した。
人生紆余曲折ですね~。
そんなクラプトンの心境がこもった1970年の名盤に、件のブルース・ナンバーも収録されているというのは実に興味深い。
一人の男の愛と友情の葛藤をブルースした名曲に一体その当時のクラプトンはどんな思いを込めていたのか、そしてフレディとはまた違った味わい深いギターフレーズを叩き込み、どのようにこの曲に命を注ぎ込んだのだろうか…。
この二曲を一緒の作品に収録したというのが、色々な理由があるにせよクラプトンの揺れ動く心情をそこに投影させたのではないかと思われる。
それ程にクラプトン一人の人間にとって重大な揺れ動きだったのではなかろうか。
親友の妻に対する愛の歌を歌い、かたや愛と友情に揺れ動く男のブルース・ナンバーを一枚のアルバムに…。
一人の男の揺れ動く感情を考察する意味でも「LAILA」はまた名盤なのだろう。
ここで書いているのはあくまでも考察なので特に全く理由はないのかもしれないが…。
「いとしのレイラ」のイントロがやたらと感傷的に聴こえてくる(笑)
そして後年になってクラプトンはこの曲をカヴァーし続けるのは、やはりこの曲に特別な思いがあるからとしか思えない気がする。
どうなんでしょうね。
揺れ動く愛の感情…。
「Have you ever loved a woman」
一人の男の愛と友情に揺れ動く悲哀を描いた極上のブルース・ナンバー。
この夜長に一曲いかがだろうか?
動画でキングの歌う「Have you ever loved a woman」とそのライブバージョンを。そしてクラプトンが「Nothing but the blues」で披露している「Have you ever loved a woman」を。
よろしければご視聴下さい!!
記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!
・「意味も知らずにブルースを歌うな!」 小出 斉著 を一部参考文献にして書かせて頂いております。