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ゆったりと

夕暮れが眩しい。

眩しさは愁いを帯びている。

去りゆく太陽の季節

寂寥の念を感じずにいられない。

残暑は厳しいが

そこかしらに秋の気配が漂いつつある。

日は徐々に短くなっている。

このまま暑さもひと段落すれば良いのだが…

夏の気配の頑固なことよ。

もう少し暑さとは付き合わないといけないか。

っとは言っても、季節は立派な初秋だ。

もう過ぎてしまったことだが…

九月七日は旧暦で言う「白露」。

大気が冷えてきて露を結ぶころのことを言うそうだ。

ちなみに白露は秋分前の二十一日までをさす。

大気が冷えてくる様子などが描かれている節気でもあるので、秋の気配が強くなるはずだが…。

夏と秋の狭間の曖昧さが薄れていくのがさみしい限り。

そうなるとますます「夕暮れ」の価値は高まっていくんでしょうね。

秋は夕暮れ…。

枕草子でも秋の押しは夕暮れとしている。

今も昔も季節の趣を感じるツボは同じということか。

太陽が沈むさまは、さしずめ季節の移ろう姿を描いているようだ。

明るかった時間が徐々に短く
暗い時間が徐々に長く…

ファースト・サマー……

あっ、間違えた。

清少納言は秋の押しとして、日が沈んだあとの時間も素敵ですと綴っている。

何でも風の音や虫の音が良いんですって。

風流ですね~。

果たして現代日本で、そのように風流に敏感になれるのか…。

現代版「枕草子」でもあればね。

都会の雑踏の中でもこの一瞬がいとおかし!

っみたいな。

自分が知らないだけで、ひょっとしたらあるかもですね。

それはさておき…

日が短くなり、夜の時間が長くなっていくこの時期。

帰宅時間に明るかったのが、いつの間にやら暗くなってたりしてますよね。

ああ、もう暗くなっている。

自然と帰宅する足も早くなるわけで。

さらに寒くなってくると、いよいよ秋の深まりを感じるわけですね。

隆盛を誇っていた暑さを見送り、やがて訪れる寒さを迎えるにあたり、その入り口の季節。

夏と秋の境目は、「物悲しさ」を徐々に受け入れる季節でもあるわけか。

ならば、聴く音楽も夏に比べて自然とトーンダウンしてくる…。

いえ、人それぞれっすよ。

暮れ行く日暮れと「夏」、そして訪れる「秋」の気配を、ゆったりとしたリズムで味わおうではないか。

バディ・ガイ

バディ・ガイの過去記事です。

1936年生まれの今年で88歳!!

リヴィング・レジェンドなブルーズ・マン。

幾多の名ブルーズ・マン達と競演を果たし、人生の浮き沈みも経験してきた。

戦前を知るブルーズ・マンであり、「ブルーズ」の精神性を肌で知る、生き字引と言っても過言ではなかろう。

もしくはブルーズ界の長老…

っみたいな。

ブルーズが人生の苦闘から生まれた…。

「今では若い連中の多くはブルーズで歌われていることが理解できないんだよ。”ブルーズに出会ったとき“と歌っても、”出会っても、それを避けて進めばいいんじゃない”と、そこで表現されていることに注意を払わない。」
「俺に見えているものが彼らには見えないんだよね。金もまったくない暮らしだったし、俺たちはそれについてブルーズで歌った。でも、子供たちにはそれがわからない。説明のしようもないね。俺の家族の住んでいた掘っ立て小屋を見せてやりたいけど、それもできない。もう存在してないからね。」

ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェルより
ライナーノーツ1~2P参照

バディの住んでいた頃の南部での暮らしを振り返り、改めて「ブルーズ」の、バディに宿した精神性が伺えるインタビューだ。

興味深いんで引用してみた。

その土地の習慣や、生活、文化が音楽に深く関わっている。

その「ブルーズ」を後世に残すため、クリストーン・”キングフィッシュ”・イングラムら若手とも、積極的に交流を行っている。

「キングフィッシュ」は今年のフジ・ロックにも出演を果たしていたブルース・マンですね。

折角なんで、二人の共演動画を…
「フーチー・クーチー・マン」をセッションしている動画です。


そしてゆったりとしたリズムを刻む好きなナンバーの紹介を。

バディ・ガイが2018年に発表した作品「ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル」より。

8曲目に収録されたナンバー、「ユー・ディド・ザ・クライム」を。


4ビートのゆったりとしたナンバー。

このゆったりとした加減がご機嫌。

バスドラが腰に響く
ハイハットの音
目立たずに支えるベース音
ピアノの音色…

バディのストラトから流れる、ブルージ―なフレーズ…。

スローで寡黙な序盤から、絡みついてくる甲高いブルース・ハーブの音色。

実はこのハーブ、ミック・ジャガーが吹いているんですって。

ローリング・ストーンズの。

客演ってやつですね。

当時ミックは75歳、バディは82歳。

いや、激シブですね。

序盤の静かな展開から、後半に向けて徐々に熱を帯びていく展開。

ピアノの転がる音色や、曲の世界感を盛り上げるかのようにして吹くミックのハーブ、そしてバディのギターフレーズ。

あまり忙しそうには弾かず、余韻を残している感じがまさしくブルーズ。

何よりバディの声が艶やかで、なおかつ円熟味を感じる。

ええ、激シブです。

Cold hearted lover
In the first degree
you got away with murder
And I‘ll never be free

第一級の
薄情な恋人
悪事を犯したのに お前は罪を逃れ
俺はこの先ずっと 自由になれない

ユー・ディド・ザ・クライム歌詞
和訳はライナーノーツ参照

彼女に罪深い振る舞いをされ、どうやら別れてしまったであろう男の物語。

その罪深さと薄情さを訴えながらも、心がまだ彼女に囚われている=牢屋に囚われているとし、

もう一生お前を腕の中に抱くことができないなんて嘆いているナンバー。

この切なさや、悲哀の具合がブルージ―な演奏にも絡んでくるんですよね。

バディの張りがありつつも、少し枯れたニュアンスのある声がより情緒を醸してますね。

んで、歌詞も「罪」や「牢屋」やら「裁判官」やら。

んでそこに上手い具合に「愛」をひっかけてるが、バディの中には他の人には見えない「ブルーズ・フィーリング」を込めているんでしょうね。

いや、分かりませんが。

いずれにせよ、この夕暮れの黄昏時…

ってか、夜にウイスキーでもひっかけながら聴いた方が、より味わい深かったかなww

いつでもいいか。

まあ、取り敢えずおすすめの一曲。

ゆったりと味わおうではないか。










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