大人になりたくなかった小学校5年生
子どもにとって身近な大人は親で、私にとっては父と母でした。両親をみて、大人になるなんて夢も希望もないと思っていました。いつも忙しそうで愚痴ばかりで楽しいことなんてまるでなさそうで、私たち子供のせいでお金も自由もないと思っていることがありありと伝わってきたからです。
実際に大人になると、植え付けられてしまった価値観に苦しむことはあっても、身体的にも精神的にも経済的にも子供の頃に比べたら自由だし、楽しいこともそれなりにあります。親になる=自由がない、お金がないというのは、人それぞれであり必ずしも全員がそうであるわけではありません。
とはいえ、両親のもとで成長した私は、それでも親になる=苦痛というイメージをなかなかアンインストールすることができません。父や母には、子供には話せない大変さや辛さがあったのだとは思います。「〇〇しなくてはいけない」「〇〇した方がいい」という厳しさも時には必要だとは思いますが、それよりも生きる楽しさや大人になる楽しさを姿で教えてほしかったなあと思います。身体も心も自然に大人になっていくのに、大人になりたくなくて仕方ないってかなりしんどかったです。
思春期が始まり、第二次成長期に入ってどんどん身体は大人に近づいていくのに、学校の勉強も難しいものになっていくのに、自分や周りにより意識がいくようになって視野も広がるのに…そんな変化に戸惑いはあるものかとは思いますが、嫌悪感すら覚えていました。
父は、「大人になって社会に出て働いて家庭をもって子供を育てるのは義務」という考えをもっていました。(今も恐らくもっています)責任という意味ではそれも一理あるのかもしれませんが、私の気持ちを無視して「ずっと子供でいてラクをしたい考えはけしからん」という父には本心を伝えることを辞めるようになりました。両親をみて夢も希望ももてないというのは「失礼だし可哀そう」という気持ちもありましたが、それ以上に諦めがありました。
私は子供の頃の私に話す機会があるのなら、「大人になることはそう悪いことじゃないよ」と伝えてあげたい。もちろん、子供にも大変なことがあるように、大人にも大変なことがあるけれど、世界は広がるし、大人にしかできないこともあるし、自由もあって楽しいよと。そしてもし子供をもつ機会があるのであれば、楽しそうに生きているところを自然とみせられるような親になりたいと思います。