見出し画像

あいつ絶対献血行くつもりないな!

64才のわたしが20代の頃、勤め先の隣の席に
無愛想な若い男の子の社員がいた。

ある日、仲良しの友達がその男の子に
「知り合いが手術をすることになってO型のRH +の血液を集めているのだけれど、○○君たしかO型でしたよね?」
と話に来た。

その男の子がいつもの様に「そうです」と愛想無く答えるとその友達はすかさず、

「じゃあ○月○日の○時に、ここに献血に来てもらえる?」と言って詳細が書かれた紙を手早く渡した。

その男の子は、無言で受け取り、友達は次の同僚の机に移動した。

私はその後も、男の子の様子を気づかれない様に見ていると、忙しいのかそそくさと引き出しに渡された紙をしまい込んだ。

私は「こいつ絶対行かないだろうなぁ」と思った。

とにかく仕事が忙しい子で、毎晩遅くまで残業をしていたし、出張も多かった。

ましてや、献血に行くには有給休暇を時間単位で取得しなければならない。正直面倒だ。

数日後、私の友達が

「すみません、この間お願いした献血ですが、血液の比重が」と、呼びかける様に皆に比重条件を説明していた。

でも私の隣の男の子は聞いていない様子で、黙々と仕事をしていた。

私は「どうせこいつは行かないからなぁ」と思った。

後日
この男の子が、机の中をゴソゴソやっているので、横目で見ていると

健康診断の結果表で何やら確認をしていた。

そして、「オッケー」と小さな声で言った。

献血の日

私は友達にこの男の子が来たかどうかを聞いた。

「あ、○○君ね!一番に来てくれたよ!」

私の心は感動で震えた。

すまない○○君。

君は良いやつだったんだね。

すまなかった。そしてありがとう!

いいなと思ったら応援しよう!