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『最善のリサーチ』ジェフリー・ゼルドマンの序文

2024年5月刊行の『最善のリサーチ』には、Jeffrey Zeldman(ジェフリー・ゼルドマン)が序文を寄せています。ゼルドマンは2000年代にWeb Standards ProjectでWeb標準を推進し、A List Apartという世界最初のテックブログを開始しました。また、A Book Apartの創設者の一人でもあります。
ここではゼルドマンによる序文を全文掲載します。

序文(Jeffrey Zeldman)

デジタル時代において、価値あるデザインを生み出すためには、多様な人々を理解したうえで、人々が何を求めているか予測し、必要な瞬間に適切なツールを提供することが求められます。しかし、どのようにすれば提供できるでしょうか?  私たちは聖人でも神様でも霊媒師でもありません。他人を理解できる唯一の方法はリサーチであり、それこそがこの本の素晴らしいテーマです。

本書は他の本とどう異なるのでしょうか?  理想の世界では、リサーチの予算は潤沢にあり、プロジェクトの要件定義の前に十分な時間がリサーチに割り当てられます。また、確立されたモデル化の手順や業務プロセスによってリサーチの品質・有用性は担保されます。このような理想の世界では、クライアントはリサーチを重要視し、核心的な問いを投げかけるデザイナーを高く評価します。クライアントはマーケティング部門の指示や組織内の政治、あるいは個人の些細な欠点よりも、ユーザーのニーズを優先します。

しかし、私たちが働く現実はそのような理想の世界ではありません。現実で
は、リサーチの予算は限られ、スケジュールに十分な余裕はなく、価値あるリサーチとは何なのか社内の意見は一致しておらず、「黄色は嫌いだ」などの表面的な意見が飛び交っています。あるいは、顧客の情報を求めていると言いつつも、実際には人間の洞察力をないがしろにして、コンピューターのアルゴリズムを重用している組織で働くこともあるでしょう。

幸いなことに、エリカ・ホールは私たちと同じ「現実の世界」で働きながら、その現実の世界における作戦を練ってくれました。

リサーチが私たちにとって役に立つためには、早く実益をもたらす方法が必
要です。『最善のリサーチ(Just Enough Research)』を理解すると、重要な事実を素早く把握し、貴重な洞察を得られます。さらに、プロジェクトを破綻に導くことが多い社内の論争を避けたり、打ち勝ったりできるようになります。

本書は、敵対関係にある人々を協力的な味方につける手段を示してくれます。皆さんのチームは必ず今より良い方向へと進化するでしょう。

しかし、私の言葉を鵜呑みにしてはいけません。皆さん自身でリサーチしましょう。まずはChapter1から始めましょう。


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