バブアーは自由を感じる服だ
バブアーを初めて知ったのは19歳の時。
大学の時に、在籍していた写真部の先輩が着ていた。
艶々とした黒のビューフォートだった。
モノクロで撮るとカッコいい服かもなぁ、と思っただけだった。バブアーにピントが合うことなく、学生時代を過ごした。
10年後。
仕事帰りに、本屋で読んだファッション雑誌の写真に、目が止まった。
ロンドンの小雨の中、朝市に来た人のスナップ特集だった。
その中に、初老のおじさんが、ベースボールキャップをかぶり、色褪せたオリーブ色のバブアージャケットを着て、ポケットに傘をぶら下げ、左手にはコーヒーカップ、右手は、犬の散歩のため、リードを持っていた写真があった。
バブアーって、こんな風に着れるのか、と驚いた。バブアーのイメージは、キメキメのお洒落な人が着たり、山奥や海沿いで働く武骨なものだった。
だけど、その写真はからは、日常に溶け込んだ柔らかく、自由なイメージを感じた。
そして、僕は、こんな風に着てみたい。
初めて、欲しい、と思った。
5年後。
渋谷のバブアー直営店で、いくつか試着した後、オリーブ色のビデイルSLを買った。
帰り際に、「雨がすごいですね」と店員さんが言っていたことを、思い出す。
今は、ジャケットに着せられている状態だ。
初老のおじさんのように着こなすには、まだまだ時間がかかりそうだ。