目とか耳とか鼻とか
燃え上がるような、心の奥底から湧き上がってくるような、そんな感情はもうどこかにいってしまった。
あなたの優しさを表すような、柔らかくて朗らかな声が好きだったなぁ。決して私に向けられる声ではないんだけど、愛の言葉を呟いているわけではないんだけど、もうこの耳に届かない距離になってしまった。
いつも機嫌が良さそうな、どんな辛いことも包み込んでしまうような笑い方が好きだったなぁ。仕事で大変な時も、隣の人と談笑する時も、こっちまで笑顔になっちゃうような私にとっては特別な笑い方。
すれ違いざまやあなたの通った後にさりげなく香る匂いが好きだったなぁ。もうずいぶん感じてない匂いを、どこかで手に入れられないかって、色んな香水をかいでみたり柔軟剤を試してみたり、真面目に考えて変態。
カジュアルとフォーマルの間を絶妙に攻めて、小物には少しこだわりがあるあなたのファッションが好きだったなあ。やっぱり8コ上の余裕もあって、なんでも着こなしてて似合ってて、惚れ惚れしちゃう。
適当なフリをして、たくさん考えていて、周りの人第一なところが好きだったなぁ。あなたの優しさに何度も救われて、自分ってば何だかまだまだ子どもだなって感じさせられて、あなたみたいになりたいって思えて本当に素敵。
ここまで書き出して、結局あなたのことまだこれっぽっちも知らなくて、たくさん知りたくて、でも踏み込めなくて、飲みに行こうの約束も叶いそうになくて、もう話す接点も0に近くて、きっとこのまま親友にもなれないまま、なんだろうなぁ。
せめて、特別な、あなたにとって特別な存在になりたかった。悩んだら、私。愚痴りたくなったら、私。呑みたくなったら、私。出かけたくなったら、私。電話したくなったら、私。遠出したくなったら、私。しょうもないことでも共有したくなったら、私。なんなら恋人の愚痴だって惚気だって聞きたいって思ってるのに。
もちろん、選ばれるはずもない。友だちってどうやったらなれるんだろう。このままじゃ特別どころか、友だちにもなれないよねぇ。何かできることはあるのかな。
もしかしたら、もう、友だちにもなれないんだったら、この先細々と関係が続くことも見込めないなら、もしかしたら、思い切って気持ちを伝えるって選択肢もあるのかもね。そうやってばっさり可能性を無くしてしまうことに対して、なかなかふんぎりはつかないな。
燃え上がるような、心の底から湧き上がってくるような、そんな感情はどっかにいってしまったんではなかった。ここでくすぶってるんだった。
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