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「あびら教育プランとわたし」Vol.21〜子どもと向き合いながら、「第二の自分」と向き合った三週間〜

あびら教育プラン」に何かしらの形で関わってくれた方々の想いを聞く連載企画、「あびら教育プランとわたし」。
2月から約3週間「地域おこしインターン生」として「あびら教育プラン」に関わってくれた、”ケーキ”こと林啓樹(はやし けいき)さんに、インタビューを行いました!


自己紹介をお願いします!

 林啓樹と申します。高校まで約18年間東京で育ち、大学進学とともに札幌にやってきました。現在は北海道大学教育学部の3年生で、元インターン生の府川さん(ふかふか)と同じ学校経営論研究室に所属しています。北海道の学校統廃合や「へき地校」における教員配置問題に関心があります。

今回のインターンに参加したきっかけを教えてください。

 きっかけは大きく二つありました。
 まず、所属する学部の実習であびら教育プランについて調査を行ったことです。2024年4月からの一連の調査で早来学園やはやきたこども園の見学、関係者の方へのインタビューを行う中で、従来の公教育の枠組みにとらわれない安平町の取り組みに興味を持ちました。そんな時、調査の一環でお話を伺った井内教育長や早川さんに「地域おこし協力隊インターン」を紹介していただき、社会教育事業の一員として活動できるこのインターンに魅力を感じました。
 次に、将来の目標との関わりです。私は将来、北海道の学校統廃合が進んでいる自治体において、私立の義務教育学校の設立と地域おこしを連携させた事業を行いたいという目標があります。安平町は地域おこしの中心に「教育」を据えているという点で上記の目標と関わる部分が多くあると感じ、その取り組みについてより深く知りたいという思いがありました。また、インターンに参加することで、学校教育の枠組みを超えて、多くの方の考え方に触れたいという思いも強くあったので、人脈を沢山作りたいという思いも応募の動機となりました。

主にどのような活動をしましたか?

 あびら教育プランの遊育、あびらぼ、ワクワク研究所の活動に関わりました。
 遊育ではぷれいばのミニイベントに運営補助として、またあびらぼとワクワク研究所では伴走者として子どもたちの企画の進行に関わりました。
 インターンの序盤、私は二つの壁にぶつかりました。まず、会って間もない子どもたちとの関わり方です。初めて会う子どもとの精神的な距離の詰め方や、トラブルが起こってしまった時の声のかけ方など、どうしていいかわからないという場面も多くありました。次に、周囲から見た自分の印象を気にしすぎてしまうということです。元インターン生である学部の先輩・後輩や、安平町で活動する同年代の方と比べて自分はどのように見られているだろうかということを気にしてしまい、自分の行動に自信が持てないことがありました。

2つの壁!どのように向き合ったんですか?

 教育チームの皆さんからある助言をいただきました。
 「インターン期間中「林啓樹」として活動するのではなく、「ケーキ」という第二の自分を演じてみてはどうか?」

 「ケーキ」とはインターン期間中の私のニックネームです。新しい町で知らない方々と活動するということを逆手にとって、今までの自分ではない「ケーキ」として過ごすことで新たな自分像を獲得できるのではないか?そんな助言でした。

 こうして、私のインターン期間中の目標は「あびら教育プランスタッフの一員である「ケーキ」として、もう一人の自分像を確立すること」になりました。しかし、私は「本当にそんなことができるのか?」と疑心暗鬼でした。当時の私には「第二の自分を演じる」という言葉が「自分を偽って我慢する」ということのように思えてしまったのです。
 それでも、この目標を胸に活動していく中でいくつかの発見がありました。ここでは具体的な事例を交えてご紹介します。

 まず、中学1年生のAくんとの関係性についてです。初めて会ったのはあびらぼの時でした。自己紹介も兼ねて声をかけたのですが、いきなり会話を進めるのは難しい様子でした。そこで、Aくんが学校の宿題をしているところに「横にいてもいい?」と声をかけ、宿題をしている様子を見守ることにしました。その日はあまり会話をせずに終わってしまったのですが、後日ワクワク研究所で再会した際に、Aくんの方から「手伝って」と声をかけてくれました。この事例では、初対面であるAくんにいきなり質問攻めするのではなく「積極的に」一歩引いて見守るという判断をしたことによって、Aくんのペースを乱さずに関係性を構築することができたといえます。

 次に、あびらぼ小学部での出来事です。一緒に発表準備を進めていた二人の男の子が揉めてしまいました。すると、それを見ていたBさんが嫌がってみんなとは離れたところに行って作業をし始めました。当初、私は男の子達の近くにいたのですが、初対面で二人を注意するのは難しいと考えて別のスタッフに男の子達の仲裁を任せ、自分はBさんの伴走に回るという判断をしました。私の行動が正しかったかはわかりませんが、その瞬間の自分と子どもたちとの関係値から、相手に対して自分ができることを判断できたと感じた瞬間でした。

 最後に、ぷれいばミニイベントでの一幕です。この日はお菓子作りのイベントとあって、小学生のテンションはMAX。私はその雰囲気に呑まれてしまい、子どもたちの「おふざけ」を注意できずにいました。しかし、そこで「それは嫌だな」と不快感を伝えると、一人の男の子(Cくん)が他の子どもたちに声掛けを始め、子どもたち同士で自然と次の作業に移っていきました。それまで私は子どもたちに「正しいことを伝える」ことが必要だと考えていましたが、自分の感情を伝えることにも意味があるのだと感じた出来事でした。


あびらぼの様子
ぷれいばでのケーキ

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「第二の自分を演じる」ことで、素の自分に対する周囲の視線を過度に気にすることなく、子どもたちとの関わり方を模索することができたんですね!
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活動してみて得られたことはありますか?

 上記のような事例から私が重要性を見出した「積極的に一歩引くこと」「その瞬間の関係値や需要に依った行動」「率直に自分の感情を伝えること」は、今までの私が価値を置いてこなかった行動でした。よって、私にとってこのインターン期間は「自分が価値を置いてこなかった事象に価値を見出すことができた時間」だったといえます。

 こうした経験ができた背景には、冒頭で述べた「ケーキ」を演じることができた場面が多かったことがあるのではないか、と私は考えています。
 自分なりに「第二の自分」を演じること。これは「自分を偽る」ことではなく「自分を拡張する」ことである。
 これはインターンを通じて、私なりにおこなった考察の結果です。また、この考え方は子どもとの関わり方に限らず、どんな場面にも援用できるのではないか、と私は考えます。例えば、こんなことを聞いたら野暮かな、と思ってしまうような場面には「自分を良く見せたい」という思いが働いているといえます。そんな時に「第二の自分」を演じることができれば、臆さず質問をすることで思わぬ発見ができるかもしれません。

今後に活かしたいと思うことはなんですか

 最後に、今後の展望について書きたいと思います。冒頭、「北海道に私立の義務教育学校を作りたい」「地域おこしと学校づくりを一緒に行いたい」と述べました。しかし、このインターン期間中に安平町で様々なお話を聞いて、これだけ多くの人を動かして教育改革を行っていることに感銘を受けると同時に、自分に同じこと、いや、それ以上のことができるのかと考えて自信を失いかけています。
 しかし、それでは安平町で多くの人たちにお話を聞いた意味がないとも思っています。安平町で見た皆さんの輝く瞳、子どもたちの前向きな姿勢、そして町民の皆さんが立場にとらわれず「水平」かつ「直接的」に関わり合っている姿。こうした景色を忘れずに、行けるところまでは自分の目標を宣言しつづけたいと思います。そして、その目標を沢山「叩いて」もらうことでアップデートしつづけ、自分の目標における「軸」を確立していきたいと思います。
 最後になりましたが、三週間本当にお世話になりました。挑戦の経過を報告するために、また安平に帰ってきたいと思います!


ケーキの「やってみたい」を叶えたイベントでの様子

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ケーキありがとうございました!
「自分を拡張する」という経験が他でも活かされることを願っています!安平で待っているよ!

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