その後の、キジと極道妻と小4のワタシ
前回は、キジキジ網タイツと、
正気の沙汰かという内容だったにも関わらず、読んでいただき、更にはコメントまで下さるという、柔軟な思考界の猛者のような方々もいらして、感謝を飛び越え、申し訳ない気にさえなったが、続きを書きたい気持ちがどうしても抑えられない…
どうか、読んでくだちい。
キジが教室で暴れたあの日から、
日々は平和に過ぎていき…
「自信作です」と提出した夏休みの宿題の、
5円玉で作った亀と短歌が、婆ちゃんが作ったものであることがバレ、
みかんの汁で炙り出しの年賀状を書き、
6年生を送る会で、貧血で倒れたのち、
私は5年生になった。
そんな春、
あの某組組長の一人娘 Mちゃん
からお誕生日会の招待状をもらった。
どうも自宅で開かれるらしい。
Mちゃんの家には、行ったことはない。
でも彼女の家がどこかは知っていた。
Mちゃんの自宅には、表札とは別に、
勘帝流フォントでデカデカと看板に「◯◯組」と名前が書かれていたから。
キキララの便箋に書かれた招待状を握りしめ考えた、小5のあびか。
キジを飼っている家だもの。
豪華な会に違いない。
ゴレンジャーとか、キティちゃんとかが来るかも。何なら芸能人が来ちゃったりして。
期待に胸をおどらせた誕生会当日
大きな邸宅に着いて、まず広間に通された。
そこには懐石料理のお膳がずらりと並んで、
金色の座布団が敷かれている。
座ってもなんだか落ち着かず、座布団の端のフサフサをくるくるイジっていると、取れた。
け、ケジメとられる…
慌てて顔をあげると
正面のひな壇で、両親を従え
満面の笑みで座るMちゃんと目が合い、
私も満面の愛想笑いで返した。
お揃いの紫色のボディコンスーツを着た、
やたら肩が張ったコンパニオンのお姉さん達に、バヤリースやファンタを注がれ、
「乾杯!」という発声で食事が始まった。
しかし小5の我々には、
百合根の味がわかるわけもなく、
煮物椀と八寸で板さんの腕がわかるわー、とか盛り上がるわけもなく、
みんな無言で、もそもそ食べていた。
一通り食べ終え、
ひとり用釜飯の固形燃料が消えた頃、
どこからともなく着物の内海桂子師匠みたいな人が現れ、無表情で三味線をかき鳴らし始め、Mちゃん父の詩吟が始まった。
眉間にしわを寄せて唸るひとを、
眉間にしわを寄せながら聞いている私達。
長い長い詩吟を聞く私達。
ひたすら続く詩吟…
未来永劫続くかと思われた、長い長い詩吟がやっと終わり、すわ、ゴレンジャーかと思いきや、なんと、お誕生日会のお開きを告げられた。
期待した豪華さとは違った豪華さの、パワーランチ会食のような会だった。
お土産を貰う
玄関に誘導され、お土産の助六寿司の列に並んでいると、後ろから刺すような視線を感じ振り返る。
そこには虎の皮の敷物があり、
鎧兜と甲冑が置かれていた。
…
気のせいか。
前を向こうとしたその時、
はっ!!!
もう一度振り返り、甲冑の横にある
置物に釘付けになった、あびか。
あ、あの、キジが剥製に…
あ、アンタ…
こんな姿になっちゃって…
あんなに元気に教室を飛び回っていたのに‥
すっかり意気消沈した私は
何とも言えない気持ちになりながら、
「おばあちゃんの分もください」
と言って、助六寿司を2つもらい家路についたのだった。
そんな小5の春。
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