旅の車椅子 事前相談のメリット、デメリット

「車椅子の旅」というタイトルではなく、「旅の車椅子」というタイトルにした。
それはわけがある。
旅における車椅子の扱いについて述べてみたいからなのである。

「車椅子で行くんですが・・・」とあらかじめ現地などに相談することは、基本的にはメリットになるはずである。
なぜならそのためにできることを準備したり、手配してくれることがあるし、こうすればうまくいくが、こうするのは無理だという相談にも乗ってもらえるからだ。

しかし、時に向こうの判断で勝手に「無理です」と断言されてしまうことがある。
けれども、前もって相談したら「無理です」と言われるケースでも、もう来てしまっている場合、方法が見つかってなんとかなることも多いのである。
行きずりの人や意外な人が助けてくれる場合もある。

だから、あらかじめ相談することには結局、メリットとデメリットがあるのが現状である。

飛行機などに乗るときの事前チェックの厳しさと言ったらすごい。
飛行機全体の安全に関わることに関しては私も理解できる。
バッテリーの種類や大きさ、個数、本体の原寸や折りたたみ寸法ぐらいまでは、必要なら先に言うのは合理的だ。

しかし、その他の質問事項がA5用紙にして7,8枚はある。
その殆どはたとえば旅行社の窓口に行った場合、僕を見ればわかることだ。
僕は車椅子を止めて、旅行社の椅子にひとりで座りかえるし、障碍者トイレの位置を尋ねず、ひとりですぐそこの通常トイレに行って立位で小用を足して帰ってくる。
しかし、何ができ、何ができないかについてすべて書面にして、サインし、航空会社に届けなければならない。
それ、今、見てたらわかったでしょ?ということが、殆どだ。

現地についても、下手に車椅子とあらかじめ言うことで、対応できませんと言われることがある。
だが、行けば、こうしてこうしてこうすればできるという場合は多々あるのだ。

マニュアル社会日本は最悪のケースを想定して、難を避けるのに熱心だ。
通常でもそうなのだが、障碍者に対してそれをやり過ぎると、偏見に基づく差別になってしまう場合がある。

しかし、確かに、あらかじめ言っておけば、こういう準備がしてもらえてうまくいっただろうに、その時、その場で言っても援助が間に合わないというケースも多々ある。

ここのところの判断は難しい。

最も障碍者寄りで考えてもらえるなら、あらかじめ言うことで準備できることはしてもらう。
できないと勝手に予想したからと言って、「はーい、来てしまいましたぁー」と言っても怒らないでほしい。
僕の目で状況を見て、僕が一番知っている自分の能力、その場にいる人たちへの信頼。
そのようなもので可能になることは多々あるのだ。

それでもどうしても無理だったり、他者に迷惑かけすぎるなら、僕だって引く。

事前相談、とりあえず行く、その二本立てを適宜使い分け、またその情報をネットや本でシェアしながら、皆の自由度を広げていきたいというのが、僕の願いである。

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長澤靖浩
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