生から死へ

歩みいるとき

壁もなければ

ドアもない

いつから

黄泉へと迷いこんだか

気づかぬままに

そのまんま

残されたものたちだけが

大騒ぎをし

死体にすがって泣いている

坊主に電話をかけている

境をこえたとも知らず

つづいていく小道

一匹の蝶が

案内人

薄暗くなってやっと

体が透けてしまっていると

気づくのだ

薄い墨が流れ

渦をまいて

消えていく私

空っぽの渡し舟が

音もなく滑る河

ああ 向こう岸は

こんなに近く

いつでも隣に

境もなく

ただ 見えなかっただけなのだ

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長澤靖浩
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