阿弥陀の女性差別について

ＦＡＣＥＢＯＯＫグループでのやりとりより、私の文章を転載します。

お念仏ワールドのスレッドでＦさんより、質問がありました。
長くなりますので項を改めて、応えます。
４８願の第３５願の女性差別について。
質問は、
①誰が
②誰を
③どのように差別しているのか。
④なぜ、このような願が起こされたのかと思われますか。
具体的に。
回答します。
①誰が　直接的には大無量寿経を書いた、その当時のインド人です。その人が釈尊に仮託して釈尊が語ったことにしています。しかし、その釈尊が４８願は阿弥陀如来が法蔵菩薩だったときに建立した願いとして紹介していますから、大無量寿経という「作品」の登場人物としては法蔵菩薩が４８願のすべてを願った主語です。ですから、第３５願についても、誰がといえば、経典内部では法蔵菩薩＝のちの阿弥陀如来が、です。法蔵菩薩＝阿弥陀如来が女性差別した文言を、釈尊が説いたと、当時のインド人が書いたということになります。差別と意識せずに書いています。差別とは差別と意識していなくても、差別された側が差別と感じたら、差別となります。
②誰を　すべての女性をです。ここではＬＧＢＴへの差別は明示されていません。これを書いたときには想定外だったのでしょう。男性と女性しかいないと思っているなら、無視されているという意味では潜在的にはＬＧＢＴも差別されていると言えるかもしれません。が、とりあえず明示してある文言からは、すべての女性を。です。
③どのように差別しているのか。
まず、第３５願を訳しますね。

たとえ、私（法蔵）が悟りを開くその瞬間を迎えても、すべての方向に広がる、量りしれない、様々な仏の世界にもし女性がいたとします。その女性が南無阿弥陀仏という名号を聞けば、歓びと信心にあふれて、悟りを開こうとする心に目覚めて、女性である自分の身を嫌悪することでしょう。そして二度と女性の身には生まれないでしょう。もしも、そうならないようなら、私は悟りを得ません。

念仏に出会った女性が自分の身を嫌悪し、二度と女性に生まれないことを願うことを通して、この願は女性が汚らわしいものであると差別しています。また一度男性に生まれ変わってからでないと、悟りを開けないという変成男子の思想につながっていきます。どのように差別しているかというならば、念仏に出会った女性はすべて女性である身を嫌悪するべきだと述べている点で、女性は真実に目覚めれば嫌悪されるべき身だという差別を明言しています。また二度と女性に生まれないということを願うことで二重に女性への嫌悪・差別を表現しています。
この願が成就してからいったいどのくらいの年月が流れたのでしょうか。しかし、少なくとも娑婆には女性が男性と約同数生まれ続けています。この願は成就などする必要なかったと僕は考えますが、本当に成就したのでしょうか？　もし成就しているのなら現在女性に生まれている方は、全員、過去生で念仏に出会わず、女性の身を嫌悪し、悟りを開く心を起こさず、また女性に生まれたことになります。私の母もそうなります。しかし、私の母が生まれなければ、私は生まれていませんでした。私の祖母もそうなります。しかし、私の祖母が戦争中、防空壕のすぐ前に焼夷弾が落ち、赤ん坊だった私の母を抱いて火の中をかいくぐって逃げることに成功していなければ私は生まれていません。そのことだけをとっても、私は第３５願の女性差別は許すことができません。
今は第３５願の問題に絞りましたが、その後も仏教、ならびに浄土教の教えは女性差別に満ちています。その研究は多くの論者によって発表されています。今、僧侶の方が私に質問するということ自体が、私には意外な出来事でした。
必要があれば質問を重ねていただいてけっこうですが、私はなるべく自分が初めて発見したことを執筆して死にたい、少なくともあまり注目されていないことを執筆して死にたいので、多くの論者によって既に明らかにされている点については、私に質問せず、先行研究をあたっていただきたいと願います。源淳子さんなどの著書がとりあえずはオススメです。
なお、第１８願に五逆誹謗正法を除く十方衆生は誰でも、至心信楽欲生我国乃至十念すれば西方浄土に生まれると誓っているので、十方衆生に差別がないという主張について申し上げます。
十方衆生について、まとめてそのように「豪語」している箇所が４８願にあることは確かです。（何度もそう言いました。）
しかし、差別は常に具体的なものであり、抽象的に差別はないと宣言しても、４８願をつぶさに見るとき、上記の女性差別の例のようにその具体的な願に差別がある限り、十方衆生に差別はないというのは「そう言っているだけ」ということになります。（何度もそう言いました。）
たとえて言えば、具体的にいじめがある学校で、被害者の声は聴かず、「いじめの事実は認められません」と報告するのと似ています。
とりあえず、回答は以上。