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鉛色の冬の出米事
<作品集『黎明・複葉機物語』より>
鉛色の冬の出米事 長澤靖浩 17歳(初出『大阪府立長尾高校紀要第4号』1978年)
第一章
時々、わけもなく苦しくなったんだ。何故なのかは自分でも分析しきれない。ぼくは精神病なのかもしれなかった。あるいは苦しみの見えない奴らの方こそちょっとおかしいのかもしれなかった。
しかし、多い方を正常と定義するならば、ぼくは異常だった。ぼくの精神は何だかわけのわからないところから苦しみを湧き出させてきた。ぼくは苦しんだ。ぼくは不安でたまらなかった。ぼくは究極のものに達して安心してしまいたかった。
ぼくは神になりたかったのだ。神でないことは、ぼくには耐えられなかった。神でないことに耐えられるということは極度の鈍感症であるとさえ思った。
ともかくあの鉛色の雲に閉ざされた冬の日々、ぼくは今までにない危機を迎えていた。ぼくは自分が死ぬかもしれないと思った。いや、死ぬだろうと思った。僕には、もう長い間こんな生は耐えられなかった。ぼくの敏感すぎる精神にとって生は不安そのもの、苦悩そのものだった。ぼくは方法についてについていろいろ考えてみるようになった。自殺の方法について。
学校でのぼくは一日中、むっつりと黙りこくっていた。誰かが話しかけてきても、適当に受け流した。そんな態度をしばらく続けると、やがて誰も話しかけてこなくなった。ぼくは友というものを忘れた。ぼくは一人だった。いや、往々にして一人でさえなかった。ぼくは虚脱状態であった。ただの抜け殻であった。
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