凧           長澤靖浩

(第4回『文芸思潮』現代詩賞 優秀賞)

空を見上げると
幾重にもかさなる光の層の中で
はためく凧

光る糸がぼくの手につたえる
はげしい気の奔流
よどみ
渦まき
せせらぎ

ジェット機の翼が
空を豆腐のように切り裂いて
見えない青の中に
血がほとばしる
と見るまに
やさしい風がなだれこみ
傷に触れ
ゆらぎ
たゆたい
雲の繊維に
光が満ちかよう

はてしなくふりそそぐ
オーロラ
隕石
宇宙線
おわりのない空なるものの遊戯に
つきささる
ぼくの


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長澤靖浩
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