カレイドスコープ  長澤靖浩

(詩文集『生存権はどうなった』コールサック社 所収)

木立ちにきみが
足を踏みいれると
樹々がざわめいて
「お帰り」と囁く

鳥がさえずり
木の間に雲がながれ
日の光が斜めに射して
葉陰が地面でゆれる

きみは
風に乗ってすすみ
ときどきふりかえって
ほほえむ

両手を広げ
空を仰ぐと
太陽が眩しくもなく
くっきりと丸い

空は紺から紫へと
どこまでも深く
その底は宇宙につながっている

木立ちが途切れ
州に広がる
くさはらから
世界を眺めわたすと
花が
樹が
川が
土堤が
遠い山並が
煌きながら旋回する

僕らと世界は
ひとつに溶けて
神が神を観ている合わせ鏡が
空と大地の万華鏡になる

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