仏教豆知識
その4
ともあれ、カパットジンの意図を離れ、マインドフルネスは、宗教色を失っていきます。藤井氏は、次のように述べています。
カパットジンには仏教の思想を医療に導入しようという明確な意図があったが、MBSRの実践においてはその意図は水面下に隠れ、あくまでも世俗的(せぞくてき)な治療法としてのマインドフルネスが提示されることとなった。…マインドフルネスの宗教性が取り除かれるのと同時に、その歴史性や地域性についても脱文脈化(だつぶんみゃくか)が進んでいる。…マインドフルネスはアジア的な伝統だという見解が薄れ、西洋文明との親和性(しんわせい)が強調される。その結果として、米国の大衆にとって実践に抵抗がないものとなる。…拡大したマインドフルネスは、大量消費社会である米国に定着するにあたり、商業化の様相(ようそう)を呈(てい)している。…マインドフルな食品や化粧品といった商品はますます増加しており、マインドフルネスの商業化の兆候(ちょうこう)を顕著(けんちょ)に表している。(藤井修平「マインドフルネスの由来と展開―現代における仏教と心理学の結びつきの例として」『中央学術研究所紀要』46,2017,pp.66-69,ルビ私)