70%のSaaSユニコーン企業は既存のカテゴリに参入して成功している件

SaaS界では有名なSaaStrのブログの「About 70% of SaaS Unicorns Are New Versions of Existing Categories of Software」(=SaaSユニコーンの約70%が既存のカテゴリの新たなバージョンである)を取り上げ、私の解釈も含めて解説していきます。


この記事では

・新カテゴリを創造するのがスタートアップなのか?

・多くが成功しているアプローチ(つまり既存のカテゴリの新たなバージョンを作ること)を行うにはどうすればよいか?

に対するを作れたら良いなと思っています。


「再発明」がキーワードだ

既存のカテゴリ(マーケット)に参入して大成功した例は枚挙にいとまがありません。

SaaStrで言われているのはこの3つの成功したSaaS企業

1. Salesforce
2. Zoom
3. Slack

です。


Salesforceは、顧客管理システムは昔から存在していた中でリリース。Salesforceはクラウドを使って顧客管理システムを再発明し成功しました。


Zoomは、シスコのWebExやGoToMeetingなどのWeb会議システムという直接の競合がいる中でリリース。WebExより優れたUXとより安定する通話という再発明を行い、急成長していきました。

ちなみにWebEx自身も元々スタートアップで新たなカテゴリーを創造しました。シスコが2007年に32億ドルで買収したプロダクトなのです。


Slackは、HipChatやBasecampのチャット機能などのビジネスチャットはもちろん、Messengerなどのメッセンジャーアプリが利用されている中でリリース。圧倒的なUXとバイラル設計などの再発明を行い、急成長しました。(最終的にHipChatは運営停止。Slackに吸収されました)


では、この3社は何をやったのでしょうか?

彼らは「再発明」を行ったのです。

Zoom創業者の起業時のプレゼンは「WebExより良いものを作ります」というシンプルなものだったそうです。当時WebExで働いていた創業者は、WebExはエンタープライズに売れていて収益があったものの顧客の不満をよく聞いたそうです。


では、再発明とは何でしょうか?

3社の共通する「再発明」とは主にプロダクトに関するものに見えますが、セールスやマーケティングにおける再発明でも良いでしょう。Slackの「無料プランでもユーザー数は無制限」という仕組みはマーケティング的な発明でしょう。HipChatはそうしていませんでした。

これは、「10倍良くする」ことだと考えて良いでしょう。プロダクトの体験を10倍良くするか、セールスを10倍上手くやるか、マーケティングを10倍上手くやるか。こういった視点で考えつくものなのではないでしょうか?

日本のSaaS企業においては、SanSanが紙の名刺管理を10倍良くしましたし、freeeMoneyForwardは会計システムを10倍良くしました。

既に人々/企業がお金を払っているマーケットに取り組み、再発明することでイノベーションは起こるということです。

全く新しいカテゴリーを生み出してイノベーションを起こすよりも、既存のカテゴリーで再発明を行いイノベーションを起こすほうが簡単とも言えるでしょう。


再発明を可能にするもの

冒頭のSaaStrのブログでは、再発明のきっかけとなるものとしてテクノロジーの勃興を上げています。

確かにSalesforceにとってそれはクラウドだったでしょうし、それはfreeeにとってもそうでしょう。

クラウド、スマホ、VR、AI、クリプト、、、これらのテクノロジーが可能にするもので、かつ既存のカテゴリーに再発明を行えるものは何か?というシンプルなアプローチです。もちろん顧客視点の課題解決にもならないといけませんが。

例えばMeta(Facebook)はVRデバイスでVR領域の発明を行うと同時に、ミーティングに再発明を行おうとしています。↓


まとめ

スタートアップというと全く新しい革新的なアイデアからスタートしそうなものですが、多くの成功したスタートアップは外から見ると「あ〜なるほどね、アレ系ね」と言えるような領域だったりします。そして、そうであったとしてもイノベーションは起こせるものだ、ということです。

とはいえ、考えてみれば当たり前です。iPhoneの前にスマホはありましたし、iPadの前にタブレットはあったわけです。

再発明だけがSaaS企業の成功方法ではありませんが、再発明というキーワードを頭に入れておくのは、戦略を考える上で非常に役立つでしょう。

さらに、考慮しておくべき点として、誰でもできてしまうような再発明を行う場合には、資金を大量に調達して爆速でスケールしきらないと類似スタートアップに敗北する可能性もあります。とはいえ参入障壁のあるような再発明はなかなか難しいので。